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BPUビジネス基礎講座 戦略立案のための分析の技術

 これまた人事部からもらったまま受講期限の9月末日が迫った、東京マネジメントコンサルタンツ 後正武代表の「戦略立案のための分析の技術」を観る。12時間、ほぼぶっ通しで観るとちょっとした合宿みたいな感じがするけれど、細切れにやるよりも沁み込む気がする。

  1. 戦略立案/問題解決の一般プロセスを理解する
  2. 課題解決への取り組み(イッシュー・ツリー)を考える
  3. 「分析」の意義と手法を理解する
  4. 分析の基本(1):「大きさを考える」
  5. 分析の基本(2):「分ける」
  6. 分析の基本(3):「比較する」
  7. 分析の基本(4):「時系列/変化を考える」
  8. 分析の応用(1):「過程・プロセスを考える」
  9. 分析の応用(2):「バラツキを考える」/(3):「ツリーで考 ….
  10. 不確定なもの・あやふやなものを考える
  11. 人の行動・ソフトの要素を考える
  12. まとめ「分析と実務」

 的確な事例と奔放な比喩が、氏の講義の魅力だ。時系列の話で、「ゆく川の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。流れに浮ぶ水泡はかつ消えかつ結びて久しくとどまりたるためしなし」なんて突如として鴨長明がフィーチャーされてしまう、そんな自由さが好きだ。

 ほかにも「色と電磁波の話」と「ランチェスターの法則」は単なる例示ではあったけれども、それ自体が充分に示唆的で、これらについては別の機会にじっくり考えてみたいと思う。こんな風に、考える材料をくれる話というのは、ただ目から鱗が落ちるようなタネ明かしよりも、はるかに長い間楽しめるからお得だ。

 魚をもらっても舌鼓を打っておわりだけれど、釣竿をもらえば一生の趣味になる。僕が渇望しているのは、つまり、そういう遊び道具なんだと思う昨今。

 観終わった早朝に書いた小論文はこんな感じで、目下添削待ち。

「分析の技術」と企業統治

 「戦略立案のための分析の技術」が非常に興味深いのは、この技術の運用によって、ある意思決定に至った経緯を定型的に記録することがでる点である。換言すれば、分析の技術は、本来は不可視である思考を可視化する技術であるとも言えよう。思考の可視化を通じ、組織の意思決定は後日検証可能な証跡を残すことになる。それは即ち、ある決断はその結果における当否に関わらず、その過程における妥当性を事後に問われ得ることになり、経営者に充分な説明責任を負わせることが期待される。とすれば、分析の技術を通じて残される思考の記録は、会計監査上の監査証跡と同様に

経営に緊張感を与え、企業統治の有効な手段として機能するであろう。

 ある企業が一定額の売上を計上したとき、その妥当性を検証するには注文書・注文請書・納品書・検収書などの証憑が要求される。これらの証憑書類が完備されていなければ、その売上の妥当性自体が疑われることになる。一方で、売上の計上よりも上位の経営行動である戦略の決断に対して、その妥当性を担保する証憑は必ずしも売上計上のそれほどには明確でない。株主総会なり取締役会なりの議決は、ある結論に対する承認に過ぎないのであって、かかる結論が他の無数の選択肢のなかから充分に吟味検討されたものであるかを担保するものではない。あるいは、その結論が導き出された分析の“深さ”を担保するものではない。戦略の決断がステーク・ホルダーに与える影響を鑑みれば、この“結論の深さ”を立証する証跡が、株主と経営者双方の保護のために必要なのではないだろうか。

 根拠となる分析の深さを考慮すれば、結論の真偽は単なる二元論から二次元の四象限へと分化される。つまり、1)深い分析を経て真だった場合(「サラブレッド」)、2)深い分析を経たが真ではなかった場合(「タコマ橋」)、3)深い分析を経なかったが真だった場合(「ジャックポット」)、4)深い分析を経ず真ではなかった場合(「生煮え」)、の四者である。

 短期的には「サラブレッド」も「ジャックポット」も等しく歓迎されるかも知れないが、その両者は本質的に異なるものである。「サラブレッド」は論理的な裏付けが強く、またその論理は関与したスタッフによって明確に共有されており、さらに他のスタッフとも明示的に共有することができる。つまり「サラブレッド」は再現性の高い成功であり、ひとつの「サラブレッド」が出現することで第二・第三の「サラブレッド」をより高頻度で出現させる上向きの学習曲線が存在する。一方の「ジャックポット」には論理的な裏付けが弱く、関与したスタッフすら成功の理由を明確には把握できないであろう。とすれば他のスタッフに対して成功の理由を開示することも不可能であり、次に「ジャックポット」が出現したとしても、その間隔は従前のそれと変化がない。

 同様に、短期的には失策の謗りを受けるかも知れない「タコマ橋」も本質的には失策ではなく、過程における妥当性は積極的に評価されるべきで、その肯定的評価という共有の価値観が次の「サラブレッド」を生む7Sを形作ることになる。なぜなら、「タコマ橋」が経験した分析は「サラブレッド」のそれと同様に組織内で共有可能であって、かかる分析は失敗の検証を経て次の分析の基礎とすることができるからである。この流用によって次の分析のリードタイムは短縮され、また、失敗の検証が次の分析の精度を高めることが期待され、その両者によって上向きの学習曲線が形作られることが期待される。一方の「生煮え」には将来の流用に足る分析をもたらさず、結論に至るまでに費やした時間は次回の分析の土台とはなり難い。

 では、どのようにして「サラブレッド」と「ジャックポット」とを、あるいは「タコマ橋」と「生煮え」とを峻別すればいいのだろうか? ここに、思考のガイドラインである「分析の技術」のもうひとつの重要な機能が発揮される。この技術に則って分析を行えば、対象の測定・区分・比較・経緯についてのデータや、分布・過程・イシューツリーについての考察、あるいは不確実性やソフト要素を検討した様子が記録される。これらの証跡は分析の“深さ”を担保し、その“深さ”は「サラブレッド」と「ジャックポット」とを峻別する。そしてこの峻別によって企業の継続性が明らかになるとしたら、分析の技術は経営者にとって無視できない基準となり、企業統治の有効な手段となるであろう。

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