- June 30, 2007 12:00 AM
そろそろホテルを出ないといけないのだけど、ひさしぶりにエントリー。
東京からロサンゼルスに向かう飛行機を降りるとき、すんごいゴツいひとがファースト・クラスから出てきたので思わず見入ってしまう。ウェストのせいで窮屈そうに飛行機の通路を通る人は珍しくもないけど、胸板で窮屈そうというのはなぁ。と、無意識に見入っていたら、胸板の持ち主にスマイルされた。いやいや、オレ、ゲイじゃないし。
あ、違う違う。この人懐っこい笑顔、なんか見たことあるし。彼って、ビリーズ・ブート・キャンプのビリー・ブランクスじゃんか。うわ、めちゃ嬉しい。ってか、最早ありがたいって域。触ったらご利益ありそうだし、人生とか変わっちゃいそうだし。なんて思いながらスマイルを返す刹那、ちょっと気まずいことに気づく。
テニスのサービスで言うと、トスを上げた瞬間にグリップがしっくりきてないことに気づいて、でも止められなくて、フォールトしちゃうような、あの土壇場の厭な感じ。
そりゃそうだろ。僕はビリーズ・ブート・キャンプのCMに感化されて、ずっと「やりたいやりたい」って思ってて、それは事実だったから「ファンです」って手を伸ばしかねない勢いだったから。そして、確かに1回は試したんだけど、かなりキツくて30分目で一度休憩して、残りを惰性のやっつけでダラけてやって、それ以来いちども観ていなかったから。1日目で脱落してるから。
ゲートが開く。ああ、気まずいなぁ。先生にばったり会ったのにレポート出してないことを思いだして、でも先生はまだ採点とかしてないからそんなこと気づいてなくて、僕は「人生を変えるんだ!」とか言われっぱなしみたいな。「ズルができないから好きだ」っていうビリー・バンドを買わなかったせいで、案の定、要所要所でズルしてる上に、繰り返すけど1日目で脱落してるし。オレって最低だ。人生なにも変わっていないどころか、脱落の予感もあってDVDは買わずに友達に見せてもらったし。逆のベクトルに成長してるっていうか、ファンなら買えよというか、ファンと言えるのか?という根本的な気まずさ。
そんなワケで「お目にかかって光栄です」的なことも言えず、ちょっと明るい話題がないかと探してみて、機内で読んだ週刊誌を思いだしたんだけど、「赤坂でパパラッチされてましたね。見ましたよ。(ニヤリ)」って言っても感じ悪いだけだし。ちょっと距離を取りすぎてる感じで溝は深まるばかりだし、むしろビリーには脱落者の遠吠えにしか聞こえないだろうし。そんなこと言って、となりのガールフレンドないしマネージャーないし両方兼務みたいな人まで敵に回すのは愚策だし。
ともかく飛行機を降りたら、出口で空港職員と話していたるふたりを追い越してしまいつつ、サインをもらうことを思いつく。動く歩道を歩きながら、胸のポケットからペンを出すけど、さて、何に書いてもらおうか。僕は白いジャケットを着てるから、背中にサインしてください!といったら、ロックバンドにクレイジーな女の子の「Tシャツの胸にサインして!」的な熱狂が伝わるだろうから、そしたら1日目で脱落したことを許してもらえるだろう、というか、まさか1日目で脱落したとは思われないだろう。気まずさの上塗り。
結局、バインダーからルーズリーフを1枚はずして手にする。この、大人感あふれるジャッジメント。「娘がファンなので」という感じで。「僕も試してみたんですけどね、いやぁ、ハードですね。」という感じで。「結局1日目で脱落してしまいまいたよ。はっはっは。ビリーバンドも使いませんでしたよ。はっはっは。ごめんなさいごめんなさい。」という流れで。
そこで歩くのをとめて振り返ったら、ふたりは動く歩道に立っていたから、すごく距離が開いてしまっていて、動く歩道の出口で待つのも気まずいし、逆走して近づいたらもっと気まずいし、そもそも1日目で脱落だから気まずいし、ということで諦める。というか、1日目で諦めていたから。ビリーはビリーでがんばったらいいと思うよ。オレもがんばるからさ、的な甘酸っぱい感じで。
それでいて、「というかビリーだったら動く歩道に突っ立てないで歩けよどういうことだよズルすんなよビリーバンドは使わないのかよ人生変えるんじゃなかったのかよ」と憤ってしまう部分もあり、ファンはつくづく勝手だと思う。ビリー、来日おつかれさま。


