- 2007-10-11 (木) 13:46
- 食べる

もしかしてポケットのメモを読まれた?…かと焦った。なにか重要な会食を用意しなきゃいけなくなった時のために、出発前に調べてきたレストランに、まさか自分が案内されるなんて思ってなかったから。
カンヌからちょっと離れたムージャン村にある、アラン・ロルカ ムーラン・ドゥ・ムージャン(Alain Llorca Moulin de Mougin)は、一言で言えば「間違いないお店」ということでメモしてきたのだった。もちろん、行ったことなんかない。
そんなわけで、カンヌのホテルを出たタクシーが山に向かう高速道路に乗った時は「まさかね?」って気分だったし、30分くらい走って古城のような建物の前に着いた時は「キター!」っていう感じだった。「ムージャンの風車」という店の名前の通り、この建物は16世紀に建った古い風車小屋なのだそうだ。16世紀って!
三つ折りになったメニューは、左から「古典」・「現代」・「軽め」という構成になっていて、それぞれに前菜・主菜・デザートの分類があり、さらに各項目に3品ほどが書いてあった。英語のメニューもあったのだけど、同席者がフランス語を訳してくれたのでそれに従う。
突き出しに出てきたのは、モッツァレラ・チーズとトマトとオリーブの串刺し、そして、オリーブが載った一口大のタルト。21時間の長旅だったけど、行き着いたのが他ならぬ地中海で良かった、なんてしみじみ感じさせてくれる幕開け。
まず選んだのは「軽め」の前菜から「スライスした鮭のマリネ、生アーティチョークとトリュフのサラダ」。スライスと書いてあった鮭は、実はスーパーに売っている焼魚用の切身くらい大きな固まりで一同苦笑。こんなに大きいのに筋に沿って柔らかく解れて、ハーブが効いていて飽きもこない。
次が「現代」の主菜から「ハトの照り焼きバルサミコ酢、フォア・グラのスライス」。鳩は初めてで、あらためて、フランス人の小動物に対する食欲に感服。ウズラとかウサギとか果てはエスカルゴとか、よく捕まえるなぁ。僕は最後の最後に腿の骨を見て、上野公園を思い出してしまったのが悔やまれる。勢いで完食のこと。
ワインは同席者がボルドーのサンテミリオンを選んでくれた。上野公園に負けない力強さもありつつ、不忍池のような滑らかさで、って自分でも意味分からないけど、ともかく、ハトの野趣に負けずかつそれを包み込む柔らかさが印象的。フランスの田舎で、娘たちがブドウを踏むのを眺めながら老後を過ごそう、とピーター・メイル的妄想。
デザートの前に、チーズ。ちょうど僕が、以前パリ空港で買ったマンステールのせいで帰りの機内が明らかに臭くて気まずかった話をしたところだったので、「あなたはヤギも好きでしょう」と言われ、確かにその通りなのでシェーブルをもらう。あとはミモレットと、そんなに臭くないウォッシュ・タイプのなにか。ミモレットの切り方はちょっと厚すぎて、しばし会話に参加できないほど。アゴの筋トレかと。
最後に「古典」のデザートから「野イチゴとレモン・クリームのタルト、プロバンス蜂蜜風味のバニラ・アイス・クリーム」。野イチゴというのは痛みやすいのでパリではなかなか手に入らない、と同席者が言っていたのでありがたく食べる。でも、いちばん驚いたのは蜂蜜。ありえない芳醇さだったので、皿まで舐める勢い。
そして、エスプレッソとともに駄目押しの焼き菓子。テーブルのみんなは完全に満腹という風だったので、アーモンドのヌガーやらココナッツ・クッキーやらチョコレートやらを1人で食べてしまう。マカロンを食べたらもう1歩も動けなくなることが明らかだったので、そこは大人になって諦める。大塚の大勝軒に続き、また食い倒れ。
ちなみに、1歩も動けなくなった人のために(?)ホテルも併設されているようなので、休暇に来ることができたら本当にいいなぁとまた夢想。
あとで調べたらこの店、1977年にはあのアラン・デュカス氏が助手として働き、のちに彼の特徴となるプロバンス料理を学んだのだそうだ。
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