ギャンブル数学者に会ってカード・カウンティングでカジノ破りを楽しんだりもしたけれど、やっぱり、ラス・べガスの面白さはカジノよりもショーじゃないかと思う。
こんや観てきたのはメル・ブルックスのミュージカル「ザ・プロデューサーズ(The Producers)」。2006年に映画版を観て、渋谷の劇場でスクリーンに引き込まれたのを思い出して、貪欲にも舞台も楽しむことに。場所は劇場はパリ・ラス・べガス。
手許のパンフレットに曲目一覧があるので、まずはこれを引用して、興奮を"反復"しよう。
- オープニング・ナイト(Opening Night)
- ザ・キング・オブ・ブロードウェイ(The King Of Broadway)
- ウィ・キャン・ドゥ・イット(We Can Do It)
- アイ・ワナ・ビー・ア・プロデューサー(I Wanna Be A Producer)
- イン・オールド・ババリア(In Old Bavaria)
- キープ・イット・ゲイ(Keep It Gay)
- ホエン・ユー・ゴット・イット、フローント・イット(When You Got It, Flaunt It)
- アロング・ケイム・ビアリー(Along Came Bialy)
- Haben Sie Gehoert Das Deutsche Band?
- スプリングタイム・フォー・ヒトラー(Springtime For Hitler)
- ティル・ヒム(Til Him)
- プリズナーズ・オブ・ラブ(Prisoners Of Love)
- グッドバイ(Goodbye)
舞台自体はとにかく楽しかったんだけど、前半は「うわ、ここまで俗悪だったっけ」って思わず笑ってしまうほどだった。ブロードウェイ・ミュージカルの落ちぶれたプロデューサーのマックスが、わざと最低の芝居を上演して制作費を持ち逃げしよう、ということで選んだ演目が「春の日のヒトラー」。
ハーケンクロイツを腕にした俳優たちを、ここアメリカの舞台で観るのは、はじめはなんだかすごく緊張した。鳩までもがナチ式の敬礼をして、まぁその時点でおふざけであるのは明らかなんだけど、かなり強烈。そして、ゲイゲイしい登場人物たちが声を揃えて「キープ・イット・ゲイ」と歌う。どんだけ〜。
そんな狙いに狙った俗悪さが、そして、人間ドラマを際立たせる。冴えない会計士のレオが、プロデューサーになる秘密の夢を声高に「アイ・ワナビー・ア・プロデューサー」と歌えば彼を応援したくなるし、なによりも相棒のマックスをかばうためにレオが歌う「ティル・ヒム」も涙を誘う。
オカマのヒトラーを主役に迎えたバカバカしさを極めた劇中劇の、そのバカバカしさも笑うほかないのだけど(実際にすごく愉快だ)、人間ドラマとしてのメリハリがあるから心底楽しめる。感動する。プロデューサーなんてこんなもんだぜ、という自虐的な素振りをバカバカしい劇中劇を軸に見せておきながら、それでも、プロデュースにかける思いはレオを通じてひしひしと伝わってくる。
そんな思いが高まったところで舞台は大団円を迎え、僕は迷わずスタンティング・オベイションを送る。舞台を観て惜しみない拍手を送るのは至福の瞬間だし、劇場が割れんばかりの拍手を受ける出演者も嬉しいだろう。俳優たちが去ったあとは、オーケストラ・ピットの指揮者と楽団員たちに拍手を送る。
自分の才能が讃えられることはもちろん、他人の才能を讃えることも同じように幸せだ。つまり劇場というのは、そういった幸福に満ちる空間だ、って気づく。
ホエン・ユー・ゴット・イット、フローント・イット。才能を持っていたら、見せびらかせ!



