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ブリ大根とヴァイオリン - 生涯初等教育


 渋谷でブリのカマと大根と生姜をいそいそと買い込んで家に帰る。ブリ大根を作るのだ。京料理を食べて日本食に目覚めたところで、たまたま見た旅番組が北陸の郷土料理としてブリ大根を紹介していたからだ。いろいろ自分でやってみないことには、分からないことも多い。そんなわけで、食後はヴァイオリンの練習。家庭科のあとは音楽。死ぬまで小学生宣言。

 ブリ大根は、キッコーマンのレシピを表示させた携帯電話を睨みながら料理。醤油と味醂だけでなかなか旨くなるから、さすが醤油会社のレシピ。独断で料理酒を入れてみたりして、このイタズラが楽しい。料理酒を入れた僕のその判断ゆえに、抜群に旨くなった気がするからだ。
 「落としぶた」が家になかったので省略したけれど、それにはどんな効果があるのだろうか? 鍋の蓋じゃあダメなんだろうか? おそらく料理酒と同じように、落としぶたをした、という心理的効果は大きいだろう。とはいえ、それだけなら今回のように「落としぶたなんか要らない」という気力でなんとか乗り越えることも出来たはずだし、それで済むなら落としぶたは淘汰されていたはずだ。あくまで謙虚に、あくまで基本に忠実に。次回は用意しよう。
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 食後はヴァイオリンで、習ってきたばかりの「メリーさんの羊」と「かえるの歌」を弾く。すっかり忘れかけていた曲たちだけど、そのメロディとともに初々しい挑戦の気持ちがよみがえってくる。もちろん、音程はなかなか合わなかったり、合ったと思ったら隣の弦を触ってしまっていたり、道程は長い。そして、楽しい。
 弦楽器のなかでもヴァイオリン(やらチェロやら)は、弦を擦るから擦弦楽器というらしい。ギターは中学生のときに音楽の授業でやったけれど、もちろん弓は使わないから擦弦楽器デビューだ。それだけで嬉しい。それはちょうど、まさに中学生のときにギターを初めて抱えたあの気分と同じだ。そうかこれは、音楽の授業なのか、と思う。
 義務教育というのはよく出来ていて、好き嫌いに関わらず一通りのことに出会う。ところが、大人になると仕事を除いてそういう機会は著しく減ってしまう(ゆえに仕事の面白さが増すのだけれど)。だからこそ、こうやって自ら家庭科だの音楽だのといった、人生の必修科目を意識的に履修しよう、というキャンペーンが大きな意味を持つのだ。
 巧拙は二の次で、世界の大きさに自分の関心を合わせるべく、ちょっとだけストレッチする。これが、死ぬまで小学生宣言。なんて思いながら「メリーさんの羊」と格闘する。

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