- 2008-03-26 (水) 1:18
- 学ぶ

慶大DMC機構のシンポジウムと懇親会に参加。三井物産の吉川治宏氏や慶大の内田真理子氏の発表にあるコンテンツ事業の海外志向には、共感するところが当然ながら多い。とはいえ、慶大の金正勲氏による、「コンテンツ学会」の旗揚げや、日本におけ周波数オークションの政策検討の宣言に何よりも刺激を受ける。自由と実学を志向する校風に、僕は懐かしさと興奮と、そして時代の胎動のようなものまで感じちゃうのだ。大袈裟に言えば。
ちょうど3月24日の日経新聞に、「社会人は『公私混同』を」と題した糸井重里氏のコラムが載っていた。そのコラムは、「勤務時間中に映画を見にいってもいい」という彼の事務所のルールを紹介したうえで、次のように続く。
映画は『私』のひとつにすぎませんが、想像力を育ててくれるし、心が満たされる。そんな楽しみを知っている人でないと、人の心を打つような商品は生み出せない。自分なりの考えも持てないと思います。
僕にとって、コンテンツ産業に日夜従事することと、半歩引いたアカデミックないしはポリティカルな視点でコンテンツ産業を眺めることは、字義通りの「公私混同」として実益と趣味とが含まれていて、かつ、その両者は糸井氏の示唆するような相互補完の関係を築いている。
一昨年に僕は、総務省の受託研究として「今後のわが国の放送番組海外展開手法に関する調査研究検討会」という長い名前の会の委員をやったけれど、これも心情的には仕事というよりも趣味だ。こういう性癖があるものだから、僕はやっぱり、学会立ち上げの手伝いやら他のプロジェクトへのコンテンツ提供やらの申し出をせずにはおれない。
微力なりとも公共的なプロジェクトに関与できればそれは光栄なことだし、なにより、そういう場で得るものは却って申し訳ないくらい大きい。DMCは政策提言や産学連携を明確に志向していて、その志が出自の異なる産業人を集めている。そういう場は間違いなく楽しい。クラブのドアから漏れてくる心地よいベースを聴きつけたら、ノブを引かない理由がない。ルカーっと叫んでドカドカ行こう。
周波数オークションは、自由と実学の端的な例でしかないけれど、とびきり刺激的な例でもある。アメリカではちょうど、アナログTVの跡地のうちアメリカ本土全域をカヴァーする周波数帯域を、ヴェライゾン・ワイヤレスが約96億ドルもの金額で連邦通信委員会から落札したばかりだった。電波資源における受益と負担の関係がオークション制度によってかなり明確になっているように見える。
一方の日本では、衆院議員の河野太郎氏のブログによると、 放送局の営業収益合計3兆円超に対し、放送局の電波利用料負担は合計でも35億円に満たないという。携帯電話事業などとの比較をすべきとしても、河野氏の「電波を独占して上げる収益に対して利用料が千分の一。低すぎませんか。 」というコメントには説得力がある。
シンポジウムの席上では、総務省のある局長が日本の電波資源の価値を100兆円と見積もった、なんて話も聞かれた。周波数オークションをめぐる議論が既存放送局の反発を誘発することも必至で、僕も職業的にはその賛否からは距離を置きたい気分がある。その気分自体は、シンポジウム後の懇親会で、産学問わずあらゆる立場の方々が口にされた。そういう現状が一方にはある。
一方で、その現状を踏まえてなお、というよりは、踏まえてこそ、「どうあるべきか」を議論するというのが金氏の意気込みなのだから、その刺激的な試みには興奮を覚える。僕にとっても、これは予断を持たずに、客観的な視点から考えてみたいテーマのひとつだ。そして、その洞察を何らかのかたちでコンテンツ産業に投げ返せたらと思う。こんな自由と実学の気風に立ち返れば、公私ともに出来ることは少なくないんじゃないか、なんて、甚だ私混同手応えを感じた一晩。
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