- April 30, 2008 3:57 AM
- 暮らす
ニュー・ヨークの空港で、さんざん迷った挙句にランコム・メン(Lancome Men)のハイドリックス・マイクロニュートリエント・モイスチャライジング・バーム(Hydrix Micro-Nutrient Moisturizing Balm)を試してこれを買った。この判断には3つの基準があったのだけれど、最大のものは世界の男子に対する盲目的な信頼ないしは期待だ。
もともとは、いま使っているエスティ・ローダー(Estee Lauder)のニュートリシャス・ヴィタミネラル・モイスチャー・ジェル・クリーム(Nutrisious Vita-Mineral Moisture Gel Cream)が減ってきたから円高に乗じて補充しよう、と思っていた。店ではニュートリシャスのヴィタミネラル・ラディアンス・エッセンス(Vita-Mineral Radiance Essence)とアドヴァンスト・ナイト・リペア(Advanced Night Repair)の50ml瓶ふたつがセットで110ドルくらいで売っていて、僕はほとんど「このチャンス逃すまじ」って気分になっていた。
けれど、難点が2つある。ひとつには、お守りと同じで点数を増やすと「どれが効いたのか」判別できないため、品数は増やせこそすれど減らせなくなる。つまり、化粧品会社と心中するモメンタムはさらに強まり、その奔流からは距離を置きたい。ふたつには、ポスターの「For every woman. Every night.(すべての女性に、毎晩。)」の文句が喚起した不安。女子にベストなものが果たして男子にもベストであるか。一方で、ランコム・メンは文字通り男子向けだし、朝夕とも1点でいいところが、ニュートリシャスのクリームと違う。
たまに夜のクリームを間違って朝つけると、左右違う靴下を履いてプレゼンをするような、他人にはまったくどうでもいい、けれど妙に居心地の悪い気分になる。数千円も払って妙ちきりんなドロドロを塗って、朝用だ夜用だのしゃらくせえ、てやんでえ。そこで、僕はちゃぶ台を引っくり返すことにした。
もちろん、ローダーを選んだのも理由があった。男子は無知で騙されやすいからだ。女子の友達はmixiやらブログやらで長々と化粧品評を書いたりしていて、まったく侮れない。他方で僕ら男子は「なんとかオム」とか「なんとかメン」と言われると、その「なんとか」に聞き覚えがあればそれだけで、尻尾を振ってありがたがってしまう。僕が化粧品会社だったら、手ごわい女子向けに熱心に商品開発をして、余り物を詰めて男子に売るだろう。ちょっと高めに。
そんなわけで一日の長のある女子のフィルターで濾過されたローダーを選んでいた。ところが、男性向け化粧品市場の成長も久しく、そろそろ男子のフィルターを信じてもいいのではないか、なんて主体性なく思う。男女の肌質が同じだとは到底思えないし。そこで、メトロセクシャルの御旗を掲げて先陣を切った諸男子の累々たる屍の上を、ちょっと恐る恐る歩いて行こうという寸法だ。まったく姑息だ。
さて、ランコム・メン。まず感動したのは、容器がガラス製だということだ。これが痛く気に入った。ローダーのプラスティック製の容器は理解に苦しむところだったからだ。実に非近代的なことに僕には、プラスティックやナイロンは、金属や木や皮革や陶磁よりも劣るという、頑迷な序列がある。使用前から容器で感動しているような輩に中身を判断する分別があるはずもない。だから、ほかの男子に追従するのだ。
願わくは、ほかの男子がガラス容器を盲愛していたり、それを知った化粧品会社が「容器でひとつ騙してやろう」なんてことを考えついたりしていませんように。男子は騙されやすいのです。特に、僕は。どうぞお手柔らかに。
- Newer: 長野をめぐる中国の束縛 - 再追記
- Older: 長野をめぐる中国の束縛 - 追記