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ピロー・トーク

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 一緒に寝るようになってから、もう4年くらい経つのだろう。けれど、僕はその枕が苦手だった。ちょっと高すぎるようで、朝起きると首が痛い。だから、ここ2年くらいは脇によけて寝ている。けれど、なかなか変えられない。買い換えた枕が合わなかったら、どうしよう。敢えて比べるならば、僕は恋愛よりも枕に関して臆病なのだ。

 そんな状態だから、出張先でいい枕に出会うと持って帰りたくなる。枕が変わると眠れないといって枕を持参する人の話は聞いたことがあるけれど、旅先から枕を持ち帰るという発想は斬新だ。そして僕はこの衝動に駆られるたびに、枕に恵まれない可哀想な自分を旅先で憐れむ。チェック・アウトしたら、またあの枕に戻らなきゃいけないなんて。これが悪化したら帰宅拒否症候群になるんじゃないだろうか。いや、これが既に帰宅拒否症候群なんじゃないだろうか。
 シェラトン・マンハッタンでチェック・アウトの朝に「この枕を黙って持ち帰れないか」と思案すること3回目にして、ついに、僕は枕を買い換えることを決意する。ほとんど持って帰りそうになったのだけれど、やはり、この枕で何百人もが寝ていると思うと気がひけた。それに加えて、ホテルの備品を持ち帰るべきではない、ということもある。帰りの飛行機は空いていたので、手近な席の枕をふたつ重ねてみたり、みっつ重ねてみたりして理想の高さを探す。なんて前向きな作業!
 調べてみるといろいろ分かってきて、青山の丸八真綿では枕の貸出をしてくれるらしい。使用してから新品を買う、というのは画期的だ。考えなしに無印良品で枕を買って失敗したり、悩んだ末にホテルから枕を失敬したりすることのデメリットを解決している。ただ、借りた枕を返す時に売価の10%が手数料として取られる、というのがいただけない。試用というのは無料であるべきなんじゃないかな。
 さて、悩んだらシモンズ。日比谷のショールームでいくつか試して、結局、デラックス・フェザー・ピローの低い方に落ち着く。普通のフェザー・ピローでも十分良かったのだけれど、普通の方は「少しごわつく」と店員に言われると、確かに「少しごわつく」感じがする気がする。そうなると、デラックスに進まざるを得ない。これはちょっとズルい。ポケット・コイル・ピローも軽やかで良かったけれど、コイルという語感が機械的で「少しごわつく」ので、実際には柔らかな寝心地だったのだけれど遠慮する。コイルに支えられるよりも、羽根に抱かれて眠りたい。いい睡眠には小さじ一杯の詩情も必要なのだ。
 さて、そんなこんなで新しい枕が土曜日に配達され、僕はついに100%の枕とベッド・インする。それはそれは素敵な夜だったのだけれど、おかげで今朝は寝坊。駅へ急ぎながら、それでも、そんな寝坊がちょっと嬉しかったりするのろけっぷり。

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