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あらすじ買い - ストラヴィンスキー「放蕩者のなりゆき」

 英国王立歌劇場のスケジュールを確認したら、水曜日はストラヴィンスキー「放蕩者のなりゆき(The Rake's Progress)」という作品が上演されるようだった。結局、その晩は会食になって観劇は叶わなかったけれど、ストラヴィンスキーのこの作品、なかなか面白そうだ。それにしても、英国王立歌劇場(Royal Opera House)がYouTubeで興行の告知をしているのには驚いた。

 まず、ストラヴィンスキーの「放蕩者のなりゆき」、ネットで調べたらなかなか救いのない話で、それゆえに僕は不思議と興味を持った。歌劇は演劇体験である以上に音楽体験であって、言ってみれば芝居としてハッピー・エンドであろうがなかろうが、とりあえずのカタルシスは音楽鑑賞から摂取する自信がある。僕は感動屋だから。ストラヴィンスキーの音楽にじっくり浸るだけでも幸せだろう。

 もちろん、こうして逃げを打っておきながらも、やっぱり気になるのは話の筋だ。あるサイトによると主人公は恋人がいるのに定職に就かず一攫千金を夢見て、ロンドンに行ったら行ったで女遊びにハマってしまう。ようやく荒唐無稽な事業に手を染めるも案の定失敗して借金まみれ。ついに精神を病んで入信したところを恋人が見舞いに来てくれるのだけれど、彼女は父親に連れ戻されてしまう。うーん、実に救いがない。

 僕自身としてはこの放蕩者ことトムのダメさ加減はなんとなく他人事でない。いち男子としては世の男子なんぞ大抵はこんなもんじゃないかと思ったりもするけれど、こういった男子のダメな部分は、できれば女子に伏せておきたい部分でもある。世の女子が山本モナ女史を非難するごとく、男子としても政治的にトムを非難しておきたい。でも、それは一方でトムに親近感を感じてしまうことの反動なのかも知れない。

 そんな訳で、この作品は敢えてカップルで観に行くこともないだろう。ワーグナーの「タンホイザー」の観劇後、父親とふたりで観にいってちょうど良かったと思ったけれど、この「放蕩者のなりゆき」もまた同様という予感がする。出張先で――ちょうど舞台もロンドンだし――ひとり観劇するにはうってつけのように思えただけに、惜しいことをしたなぁ。わざわざDVDを買って観る、という気までは起きないし。DVDを再生するよりも、劇場に足を運ぶ方がよほど退屈するリスクが低いからだ。

 それにしても「The Rake's Progress」と検索してYouTubeが出てきて、誰かがDVDから違法に抜粋した映像化と思いきや、どうしてどうして英国王立歌劇場のれっきとした告知だったのには驚いた。ニュー・ヨーク・フィルハーモニックにしても英国国立美術館にしても、欧米の古典芸能はハイテクをうまく利用しているなぁ、という印象を抱く。古典を愛するがゆえに現代のトレンドにも敏感なのだろうかと、僕は勝手に想像する。

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