Home > 食べる > グラモンとミュネレ - ブルゴーニュ飲み比べ

グラモンとミュネレ - ブルゴーニュ飲み比べ

From Blog 2009

 「耳鼻咽喉の美と言語」というテーマを思いついた僕は、それに土曜の夕方を捧げることにした。ドマーニでの会食も延期になり、妻も外出ということで、代沢の信濃屋へ。1時間弱の吟味の末に2本を選んで、ティスティング・シートを脇に置いてグラスと対峙。このテイスティング・シートなしに昨晩の濃密な体験はあり得なかったから。シートをアップロードして下さった、「極私的なワインテイスティングノート」さんにこの場を借りて感謝の気持ちをお伝えしたい。

 信濃屋のワイン館に小一時間も迷う。僕のような入門者は何と何とを比較すればいいのか。科学としては、他の要素が同一でひとつだけ要素が異なるという組み合わせがいい。現地に行ったことで多少親近感のあるブルゴーニュに絞ったものの、同ドメーヌ同ヴィンテージで村違いというワインも、同村同ヴィンテージでドメーヌ違いというワインも、見当たらなかった。そもそもこんな執的なみ方にあまり予算も割きたくない。散々迷った結果、結局は3,000円前後の次の2本に落ち着く。

ドメーヌ・マシャール・ド・グラモン(Domaine Machard de Gramont)
ブルゴーニュ 「ル・シャピトル」(BourgogneLe Chapitre
2006年

ドメーヌ・ジェラール・ミュヌレ(Domaine Gérard Mugneret)
ブルゴーニュ・ピノ・ノワール(Bourgogne Pinot Noir)
2006年

 同じ地域名ワインで同じヴィンテージでありながらドメーヌ違いという2本。これでドメーヌの特徴を多少なりともつかめるのではないかと期待したんだよね。けれど、結果的にこれらは厳密な意味で同じ地域名ワインではなかった。「日々のワインメモ」さんによると、前者のル・シャピトルは「基本的にマルサネと同じ斜面続きであるが、区画名表示のAC Bourgogne扱い」とのことで、ブルゴーニュ全域からさらに地理的に、畑の精度まで絞られている様子。
 信濃屋では他に長いバゲットとレバー・ペーストを買って、今夜はストイックにこれらだけを食べてワインの味に集中することに。料理が変わってマリアージュが変わったら、僕はワインの時間的変化を感知できないだろうから。ワインが6,000円で主食が600円だから、1:1という僕の目安からは程遠い10:1という世紀末的な比率に。普段の幕の内弁当的バランス感覚で抑圧されていた尖鋭的なオタク志向が炸裂。ネットで実に素晴らしいテイスティング・シートをダウンロードして数枚印刷し、ティスティング用の小ぶりなグラスに付箋を貼って、いざ抜栓。
 僕が感じたそれぞれの構成要素は次の通り。鼻と舌が鍛えられた方の評価と比べてみたいものだけれど、まずはコツコツと書きとめておこう。

ドメーヌ・マシャール・ド・グラモン ブルゴーニュ 「ル・シャピトル」 2006年

外観
ガーネット色、粘性あり、透明度は中程度

香り
イチゴ、カシス(抜栓1時間後から強まる)、ブラックチェリー、干しブドウ、ジャムのような濃縮感(抜栓1時間後から強まる)、カラメル、蜂蜜(抜栓30分後から強まる)

味わい
若々しさを感じるアタック、フレッシュな酸味、辛口の、荒いタンニン、余韻は6~8秒、ざらざらした渋み(抜栓1時間後から弱まる)、スパイシーな風味

ドメーヌ・ジェラール・ミュヌレ ブルゴーニュ・ピノ・ノワール 2006年

外観
ガーネット色、粘性あり、透明度は中程度

香り
ジャムのような濃縮感、木樽のニュアンス、アニス(抜栓1時間後から強まる)、蜂蜜、ヨード、黒コショウ(抜栓1時間後から弱まる)、燻香(抜栓1時間後から弱まる)

味わい
なめらかな口当たり、やわらかい酸味、適度なタンニン、濃縮感のある、余韻は6~8秒

 香りは圧倒的にグラモンの方が円熟した雰囲気で期待させるものがあったのだけれど、実際に飲んでみると味わいにはアンバランスさがあって酸味が気になった。香りからの想像を裏切る軽やかで高音域な味わいも、それはそれで悪くないのだけれど、ワインだけで味わうには酸味や苦みがキイキイとした雑音のようにも感じられた。けれど、例えばステーキやマグロのフリットのような料理に合わせたら、酸味が爽快感を生むんじゃないかな。さらに、帰宅した妻が参加して言うには、こちらは「まだまだ」と思わせるところがあるという。これを潜在性と呼びたいところだけれど、あと1年か2年したらどんな味なのかは想像がつかないので、よく分からない。
 一方で、ピリっとした香りを放つミュヌレの味わいは、こちらも意外なことに非常にまろやか。時間とともに強まる甘みの印象が特徴的で、このワインとパンだけでも楽しめるような完結性があった。僕は断トツでこちらの方が好きだ。けれど、潜在性という考え方をするならば、このワインは今がピークだろうということは僕にも直観的に感じられた。もちろんこれはいいニュースとして、だ。もし料理と合わせるならば、こちらはブフ・ブルギニオンのような煮込み料理がいいような気がする。ジャムを添えた鴨のローストがいいのではないかという妻の提案にも賛成で、グラモンにはその軽さに対して油脂の濃厚さを対照的に合わせたいという気分にさせられたけれど、ムニュレにはむしろ、ワインの甘みと沿うような甘みを重ねてみたいという誘惑を感じる。なぜだろう。
 ともかく、ボトルを並べて3時間の濃密な時間を過ごす。ワインが開くのを待つ間に、ダニエル・バレンボエムが弾き振りをするベートーヴェンのピアノ協奏曲を1番から3番まで通してDVDで観る。妻が帰ってからは鹿児島の山野井のシャーシューを切る。これらもそれぞれ素敵だったのだけれど、それはまたこんど。

From Blog 2009

関連記事:

blog comments powered by Disqus

Home > 食べる > グラモンとミュネレ - ブルゴーニュ飲み比べ

Return to page top