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吉野弘「祝婚歌」

  • Posted by: Syntax
  • January 25, 2009 10:11 PM
From Blog 2009

 学生時代の先輩の結婚式と披露宴に出席して、ある俳優の方がスピーチで朗読された詩に心を打たれる。この詩の作者である吉野氏は「自由に使っていい」と話されているようなので、この温かい人間味と鋭い洞察とに満ちた詩の全文を書きとめておこう。吉野氏はこの作品を「民謡」のごとく自由に使っていいという。賛美歌もそうだけれど、美しい言葉が共有される、そのことの美しさを思う。賛美歌312番を歌いながら、「もしこの曲に著作権があったらどれほどの収入になるか」なんて一瞬思った自分の小ささを知る。

≪吉野弘「祝婚歌」≫


二人が睦まじくいるためには

    愚かでいるほうがいい

    立派過ぎないほうがいい

   立派過ぎることは

    長持ちしないことだと

    気づいているほうがいい

   完璧をめざさないほうがいい


  完璧なんて不自然なことだと

  うそぶいているほうがいい

 二人のうち どちらかが

  ふざけているほうがいい

    ずっこけているほうがいい

 互いに非難することがあっても

  非難できる資格が自分にあったかどうか

   あとで疑わしくなるほうがいい

  正しいことを言うときは

   少しひかえめにするほうがいい

  正しいことを言うときは

   相手を傷つけやすいものだと

   気づいているほうがいい

  立派でありたいとか

   正しくありたいとかいう

   無理な緊張には色目を使わず

   ゆったりゆたかに

   光を浴びているほうがいい

  健康で風に吹かれながら

   生きていることのなつかしさに

   ふと胸が熱くなる

   そんな日があってもいい

  そしてなぜ 胸が熱くなるのか

   黙っていてもふたりには

   わかるのであってほしい
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