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一味平等 - ヤビツ峠から大山登頂


 3月28日、大山登山に挑戦。前回登ったのはたしか10年以上前だけれど、果たして大丈夫かなぁ? はじめは蓑毛からヤビツ峠を経由して登頂するルートを考えていたのだけれど、前夜2時まで飲み歩いてしまったので出発も遅れ、蓑毛に着くころには正午になってしまった。そこで、蓑毛には駐車場が見当たらなかったこともあってルートを短縮し、ヤビツ峠から登山開始。ヤビツ峠ではなんと粉雪が舞ったりして、多少ビビりつつも無事に登頂。山頂では安倍・元首相に会うというオマケつき。


 まずは東中学校の近くのコンビニでアクエリアスと弁当を、ガス・スタンドで地元産らしきミカンの袋を買って準備万端。ミカンは1袋に8つくらい入って170円。安い! 小さなコンビニにはサイクリストが10人近くいて、輪行の名所の様相。蓑毛のバス停まで車を進めたのだけれど、お寺かなにかの専用駐車場のほかは駐車場が見当たらず、その先のヤビツ峠を目指す。時計が既に正午を回っていたり、最近運動をしていなかったり、前夜深酒をしていたり、という情けない事情もあったので多少ホッとする。

 ヨセミテ旅行を機に買った登山靴を履いて、ヤビツ峠から登山開始。もうすぐ4月だというのにハラハラと舞う粉雪はまったくの予想外で、軽い気持ちでやってきた登山者をちょっと尻込みさせる。登山道の脇には霜柱が降りていて、登山道は解けた霜でぬかるんでいた。久しぶりの山歩きは思ったよりも大変に感じたけれど、それも最初の500メートルほどで、体が慣れてきたら2.1キロメートルのイタツミ尾根は行程表通り1時間で順調に踏破できた。


 涅槃寂静すら感じさせるこのシカの看板を過ぎると山頂まであと10分。シカの看板の前で、山頂から降りてきたと思しき登山者が靴底から雪山用の金具を外しているのを見かけた。僕は彼のことを、失礼ながら大袈裟な道具マニアだと思った。けれど、それが間違いだったことにすぐに気づく。山頂手前50メートルくらいの石段は北側の斜面で木陰のせいか踏みしめられた雪が凍っていて滑りやすく、短いながらも一番神経を使う個所だった。春先の休日の軽い登山で、まさか、粉雪の下で凍る石段を歩くなんて予想もしていなかったからね。登山は計画的に。


 けれど、一番予想外だったのは粉雪でも凍てついた石段でもなく、山頂で安倍・元首相に会ったことだ。山頂に程近い道ですれ違った登山者が「いま行けば山頂で安倍さんに会えるかもよ」と話してくれた。その話は意外だったけれど、そう長居はしないだろうから会えないだろうとも思った。ところが、山頂の奥の院の前には、なんと、SPに囲まれながらヤビツ峠に向かって降りる安倍氏が。登山者の礼儀として「こんにちは」と言ったら笑顔で「こんにちは。どうも」と返ってくる。霊山で一味平等の境地といったら大袈裟かなぁ。


 山頂では、厚木から伊勢原を望む頂上南側の風景を眼下に堪能して、弁当とミカンを食べる。じっとしていると、零度前後と思える凍えた外気が堪えたので、売店で甘酒を買って暖をとる。そんななか、コッヘルでうどんを茹でている湯気の一団もあったりして、実にうらやましい。家からアウトドア用調理器具を持ってこなかった自分を悔いる。隣で汁粉を飲む妻には「あんなの持ってきたら重いじゃない」と言われようと、アウトドア用品はロマンの化身。男の子は大抵、「大袈裟な道具マニア」なのだ。
 帰り道は、凍った石段のほかは難なく歩いて、下るごとに暖かくなる気温に即席の春の訪れを感じる。林道の脇で生える若木も成長の季節を予感させるし、帰りに寄ったヤビツ峠の展望台では、桜が五分咲きの風だった。


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