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Finance予習


 ビジネス・スクールの必修科目のうち、苦労しそうなところを予習しておこう、という企画。教科書に関する在校生の意見は二通りで、一方は「時間がかかっても原書のみで読んだ方が身につくし英文を読む速度が早まる」というもので、他方は「和訳も併用した方が時間の有効利用になる」というもの。それぞれに説得力がある。結局、僕は過去の経験から前者に近い立場を取って、まずは原書に挑戦してみることにする。そして、必要に応じて事後的に和書を参照しようという腹積もりだ。ところが、この原書という奴が想像以上に分厚い。先が思いやられるなぁ。

 MITスローン校が必修科目のFinanceで使う教科書は、ロンドン・ビジネス・スクールのリチャード・ブリーリー(Richard A. Brealey)教授とスローン校のスチュワート・マイヤーズ(Stewart C. Myers)教授による「Principles of Corporate Finance」。最新の第9版には、ペンシルバニア大学ウォートン校のフランクリン・アレン(Franklin Allen)教授も執筆陣に加わっていると言う。勤務先の先輩からひとつ前の第8版を借りる。第9版はボストンで読むとして、その時に2つの版の違いが分かるくらい内容を飲み込めたら自分を褒めてやろう、という算段だ。
 ところが、手渡されたこの本の重みで、僕の甘い計画はぺしゃんこに押しつぶされそうになる。アメリカの本は厚い。それはスカスカの紙に印刷されているからであって、決して分量が多いからというわけではない――という通説は霧散した。この本は薄く上質な紙に印刷されていて、1000ページ近くある。推理小説の最後を読んで興味を失うのにも似て、僕は最終ページのページ番号を見て自信を失ってしまう。重版の違い云々という以前に、とても読みきれる気がしない。
 けれども、原書のみを読むべしと勧めてくれたある先輩ですら「最初の1, 2週間は教科書5, 6ページ読むのにも1時間かかった」という。それが、量をこなすうちに「最近は斜め読みが出来るようになって1時間もあれば20~30ページは読める」というから、乗りかけた船だし、これを愚直に信じてやってみよう。
 思えばこれに似たことは経験済みだ。2002年の冬、サン・フランシスコの図書館とドーナツ店で、辞書と首っ引きでマイケル・ポーター(Michael E. Porter)の「Competitive Strategy」と「Competitive Advantage」を読んだ。はじめて読む洋書に、なぜこんな本を選んでしまったのかと自分を恨みながら。あの時に比べれば、多少は読解力もついたのではないか。否、読解力は上がっているべきだ、という前提で行こう。結局のところ、僕はあれから7年後に立っているべきところに自らを押しやるしかないのだ――現在地がそこに至っていなかったとしても。
 ミクロ経済学も読んでおこうと思ったけれど、1時間10ページ読んだとして「Principles of Corporate Finance」を読み終わるのに100時間。うーん。ともあれ、まずは目の前の敵からやっつけてしまおう。

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