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チャイルド・レーバー$ミリオネア

グローバルギヴィング(Globalgiving.com)から、「あなたが寄付したプロジェクトが更新されました」というメールが届く。僕がグローバルギヴィングを通じて寄付をしたのは、殊勝な心がけからというよりは、アメリカ人の友人Mのおかげだった。彼は昨年3月、なぜか唐突に、同サイトで使える100ドル分のクレジットを僕にプレゼントしてくれた。そこで僕は数あるプロジェクトのなかから、インドで人身売買の末に強制労働に従事させられた児童へのリハビリテーションや、アフガニスタンの地方部における情報網整備などに寄付をした。僕自身も忘れかけていたところへ、前者についての経過報告が届いた。

この経過報告によると、児童労働のリハビリ施設で、8歳から15歳の児童25人が2009年の期末試験を受験したという。90.6%(の正答率?)で1位になった8年生(中学2年生?)のKinshu Kumar君の「僕たちにチャンスを下さい! 僕たちが一番だって証明しますから! (Give us a chance! We will prove we are the best!)」という言葉に引き込まれる。僕は映画「スラムドッグ$ミリオネア」で案の定ボロ泣きしてしまったけれど、経過報告の冒頭に引用されたこの一行のセリフには圧倒的なリアリティ、あるいは、切れば血の出る人生がある。

7年生(中学1年生?)のManan Ansari君はこう言う――「クラスで一番になったことは、人身売人と、僕を重労働と暗闇に陥れた元雇い主への痛快な仕返しです。(First position in my class is my sweet revenge to the trafficker and my former employer who put me in the slavery and darkness)」。彼は2007年に雲母の鉱山で働かされていたところを救出され、このリハビリ施設で保護されたという。記事は、「Manan君のように、過去の経緯にも関わらず、能力を発揮しようという気概と意志をもった生徒たちが(他にも)いる」として、成績優秀者の名前を次のように掲げる。

Student Name Class Percentage Rank/position
Kinshu Kumar 8th 90.6 1st
Amarlal 8th 84.22% 2nd
Manan Ansari 7th 80.50% 1st
Virendra Singh 6th 76.05% 2nd
Sandeep Kumar 6th 75% 2nd
Banti Kumar 8th 71.11% 4th
Dhara Singh 9th 72% 3rd
Kailash kumar 7th 72% 2nd
Billu Kumar 5th 66.28% 1st
Mukesh Kumar 5th 65.71% 2nd

僕はもちろん、この中の誰とも会ったことはない。けれども、児童労働から救出されるという幸運のみに甘んじず、勉強に励んで自らの人生を掴み取ろうとしている彼らへの敬意を禁じ得ない。この記事を読んで、僕は自分が叱咤されるような気分になった。そして、彼らを見守るリハビリ施設の運営に、数千円とはいえ貢献して関与できたことを嬉しく思う。この中学生たちの「気概と意志」こそが、まさに、インドを牽引していく動力源だろう。児童労働を脱出し、インド経済の波に乗るミリオネアの出現も、フィクションの世界のみに留まるとは思えないし、是非そんな彼らを見てみたい。

Manan君が搾取されていた鉱山で採掘された雲母は、絶縁体や塗料として僕たちの生活にも無縁ではなかったはずだ。善良な寄付者を気取っても、もし世界を二つに分けたならば、僕は、児童労働が一端を担うインド製品の廉価によって恩恵を受けた側にいるだろう。僕は現職での最後のプロジェクトとして行った市場調査でインドについても調べ、その規模と勢いに圧倒された。必ずしも偽悪的あるいは自虐的な発想をとる必要はないけれど、少なくとも経済圏として見た日本はインドによって、「痛快な仕返し」を食らう可能性はある。もっとも、日本は既にインドの「仮想敵」ですらないかも知れないけれど。

上に名前を挙げた彼ら、あるいは彼らが表象する気迫こそが、5年後あるいは10年後に日本が世界経済で相見える良き競争相手になる。この子どもたちが無事に期末試験を終えたことを喜びつつ、僕自身もまた鍛錬しなければ相手にもされないだろうな、と悟る。ひとたびそれに甘んじてしまえば、日本における恵まれた環境は、その実、成長をもたらさない不幸な環境に容易に転じてしまう。いまだかつて経験したことのない防戦を、日本はどのように戦っていくべきなのだろうか。

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