渋谷のセルリアン・ホテルまでタクシーで行って、そこからバスで成田へ。空港のカウンターでチェックインしたら、「座席の調整」でビジネス・クラスにアップグレード。これはラッキーだなぁ、なんて思ったもののこれは機上の楼閣で、ボストンの新居の寝床はソファにダウングレード。「僕の部屋にまだ前の住人が住んでる」なんていうオーヴァーブッキング、ありえないっていうか笑えるよなぁ。
水曜日の朝、「しばらく東京ともお別れだなぁ」なんて感傷で、特に思い入れのあるわけでもないセルリアンのロビーの写真なんか撮ってみたりして。ゴルフのバッグも持って行こうと思っていたのだけれど、ワゴンのタクシーは予約制ということで断念。既に、大きなスーツケースとキャリーオン・バッグにバックパックという大荷物だしね。セルリアンで妻に見送られて出征。成田へバスで行くのは初めてだけど、駅みたいに高低差がないから非常に楽。成田エクスプレスは渋谷駅構内の遠さも東京駅構内の深さも半端じゃないし、京成の日暮里駅構内は狭くて上野駅はJRから遠い。
空港でチェックインすると、ニュー・ヨーク行きは「お座席の調整」ということでプレミアム・エコノミーからビジネス・クラスへアップグレード。8月だし旅行客が多いのかなぁ。ラウンジのカレーは11時からしか食べられないので、辛子明太子と昆布の佃煮、そして梅干に白飯、という涙が出るほど日本な朝飯をとる。僕はいわば「日本納め」という気分になっていたから、機内でも和食と和定食。読む新聞もスポーツ紙なら、映画も「GOEMON」、「デスノート」、そして「デスノート the Last name」と日本づくし。しばらく出張に行っていない間に、僕がJAL名物だと勝手に思っていた納豆スナックととんこつラーメンは提供終了でした。
たしかアラスカあたりで見たのが、この朝焼け。飛行機に乗ると毎回感じるひとつの事実は、「雲の上は常に晴れている」ということ。僕の気分は自覚する以上に天気に左右されてしまうので、外が曇天だとつい、全世界が陰ったような気分になってしまう。けれど、どんなに厚く黒い雲の上にも、そこには必ず宇宙まで続く無限の晴天がある。要は、その雲を物理的あるいは心理的に突き抜ける力を持つか否かだ。高度1万メートルを時速1,000km近くで飛ぶ旅客機に教えられること。
東海岸に差し掛かる手前で「右手にナイアガラの滝が見えます」という機長のアナウンスがあって、左舷の窓側で「モンスター対エイリアン」を観ていた映画漬けの僕はカメラを持って反対側の非常口へ行く。先客は意外にも乗務員で、彼女は「探してみましたが見つかりませんでした」と言う。恐らく機長はナイアガラの滝が五大湖のどの辺りにあるのかを知っていて、だからこそ彼にはそれが見えたのだろう。僕は今になって地図と写真を見比べて、ようやく、「あの辺かなぁ」と分かった気分になるのがやっとだった。
その埋め合わせ、ということではないけれど、多少は知っているマンハッタンを席から見た時は、ナイアガラがあるしい景を見るよりはもっと遊べた。「あれがセントラル・パークだ」、というのは別になんら発見ということでもなくて単なる確認なのだけれど、この確認には発見にも似た興奮と遣り甲斐を感じる。これは東京で高い建物から外を眺める時もそうだけれど、知らない建物を見るよりも知っている建物を見つける方が楽しいのは何故なのだろう。ずっと行きたいと思っていた未だ見ぬナイアガラの滝を探すことよりも、何度も止まったタイムズ・スクウェアのホテルを探すことに、どういう訳だか数段熱心になってしまう。
ニュー・ヨークからボストンへはアムトラックで行こうと思っていたのだけれど、成田のラウンジで調べたら片道で100ドル近くした。冬に行った時はたしか60数ドルだったので、これは考えどころだ。オービッツで調べたらデルタのシャトル便が105ドル弱で飛んでいた。これなら、手荷物の追加手数料を考えても、JFKからマンハッタンまで荷物を持って行って、時間がかかる上に時間にルーズなアムトラックに乗るよりもよさそうだ。そこで結局、空路にする。成田で搭乗の案内が始まってから乗継便を手配する、というのも随分、行き当たりばったりな話だけれど。
ちなみに、デルタの国内線の受託手荷物の制限は50ポンドまでで、僕の荷物のひとつは70ポンド近くあった。追加料金を聞いたらなんと90ドルだというので――これじゃあ運賃が倍になるようなもんだ――、カウンターの脇でバックパックに荷物を詰め替える。量り直したらちょうど50ポンドで、カウンターのお姉さんにも「やるわね」なんて言われ、僕の隠された目分量スキルに我ながら驚く。仕事が見つからなければ総菜屋か肉屋でアルバイトでもしよう。
デルタのラウンジでプレッツェルにヌッテラのクリームを塗りたくって、それを朝食にする。僕はスキッピーのピーナッツ・クリームだとかこの種のクリームが、スプーンですくってそのまま食べるほど好きだ。だから、この極めてジャンキーな朝食も、それでいて、実はそこそこ嬉しくもある。白飯と梅干の食事と別れを惜しんだ、まさに舌の根も乾かぬうちに、という変わり身が自分でも申し訳ない。そうそう、2009年9月からプライオリティ・パスではデルタとノースウェストのラウンジに入れなくなるらしい。アメリカ国内の個人旅行で重宝していたけど、これは残念なお知らせだなぁ。
ともかく、ボストンまではそれなりに快適な空の旅を送る。
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