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草上のシェイクスピア

土曜日、スローン校LFMプログラムの1年生のBが電話をかけてきて、「今夜ボストン・コモンでシェイクスピアの演劇があるから来ないか?」という。ちなみにLFMプログラムというのはスローン校とMIT工学部の共同課程で、この2年制の課程を修了するとMBAと工学修士がもらえる二重学位課程だ。Bとはお互いが受験生だった頃コネチカットのイェール大学を訪問した時に出会い、その後でイリノイのノースウェスタン大学で偶然再会して仲良くなり、連絡を取り合うようになった。そして、二人ともMITに進むことになった、という縁で繋がっている。彼が日系アメリカ人ということも、僕らを近づけた要因かもしれない。ともあれ、僕はBや彼のクラスメイト達と公園で観劇することになった。

学校の近くの同級生の部屋でジャパン・クラブとしての出し物の打ち合わせをしたあと、ボストン・コモンへ急ぐ。このボストン・コモンは僕の住むチャールズ街に接していて、家からも歩いて5分ほど。最寄りの公園のひとつだ。最寄りの公園といっても、いわばマンハッタンにおけるセントラル・パークのような街の中心的な公園で、しかも、開園は1634年。なんとアメリカ独立前からある公園ということで何とも恐れ多い。

ここでシェイクスピアっていうのもかなり英国寄りの趣味だけれど、そこに旧宗主国に対するわだかまりというのは感じられない。英米関係というのも、考えてみたら稀有な旧宗主国-旧植民地関係かもしれない。いや、待てよ。シンガポールやマレーシアも旧英国植民地同士のコモンウェルス・ゲームに参加しているし、イギリスというのはそれなりに好かれている旧宗主国のようだ。なんでだろう。

ともあれ、夜のボストン・コモンでシェイクスピアを観る。シェイクスピアの演劇というから英語の凝った言い回しでまったく理解できないかと思いきや、設定もセリフも現代版だった。ただ、僕は遅れて到着して前半部分を見逃し、セリフもうまく聞き取れない上に前の人の頭で舞台が3分の1程隠れていたりして、話はよく分からなかった。あとで調べたらこの「間違いの喜劇((The Comedy of Errors)」という劇は、2組の双子の人違い、というただでもヤヤコシイ話だったらしく、外国人泣かせだ。観ていた僕が本当にどっちがどっちか最後まで分からなかったので、感動らしいフィナーレもむしろ、「あ、そうだったんだ」という納得で終わるという寂しさ。

もし次の機会があれば、遅刻をせず、前の方に陣取り、そして何よりも酔って観劇しないこと。そんな鉄則を学んで帰る。僕のはいわば、「間違いの悲喜劇」といったところだ。ちなみに、僕とオーヴァーブックされたCもスローン校LFMプログラムの学生だったから、僕が芝生の上に陣取る10人弱の学生と挨拶をすると、「ああ、あなたが! 話はCから聞いているわ」という具合だった。規模および経緯ともに微妙な有名人。そんな有難いような有難くないような縁で僕は、翌週火曜に開かれるLFMプログラムのBBQパーティにも参加することになる。これはまさに、「間違いの喜劇」といった感じだ。

ともあれ、笑えば喜劇、嘆けば悲劇。舞台の外で、その境界は必ずしも明確ではない。心頭滅却すれば火もまた涼し?

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