- 2009-09-05 (土) 17:36
- MBA留学記


9月4日、トタル社(Total)の協賛によるエナジー・レガッタ2009に先立って同社が開催したレセプションに出席した。会場はMIT沿いにあるイギリス領事館――トタル社はフランスの企業だけれども――で、トタル社の新エネルギー研究開発(R&D New Energies)担当VPであるジレ・コシュブルー(Gilles Cochevelou)氏が世界のエネルギー需給について講演。氏によれば各種新エネルギーのミックスによって需要を満たしつつ、長期的には太陽エネルギーが”チャンピオン”になるという。化石燃料の枯渇はもはや仮定じゃなくて前提なんだなぁ、と思い知る。
コシュブルー氏によると、当日同社はMITと新エネルギー技術に関して4億円弱(4百万ドル)の研究資金供与の契約をMITと締結したという。氏もMITで科学修士を取得したとのこと。氏は主に国際エネルギー機関(IEA)のデータを引用しつつ、ピーク・オイル後の新エネルギー供給源についての見通しを説明。石油および石炭に代わるエネルギー源については原子力、風力、バイオマス、太陽光など複数に渡るとの見解を示し、「原子力に収斂するのではないか?」という会場からの質問については否定的だった。また、地球が太陽から年間120兆石油相当トン(Tonne of oil equivalent, toe)のエネルギーを受けている一方、2050年でも世界のエネルギー需要は100億から200億toe程度と予想されていることから、この膨大な太陽エネルギーが人類のエネルギー問題を解決する鍵になるだろうと結論づけた。
けれども、と僕は思う。石油や石炭が新エネルギーに対して相対的に安価である限り、例えば太陽光などの新エネルギー源への移行は始まらないのではないか? 結局、経済合理的な需要家は、A)CO2排出権料や炭素税などを加味した化石燃料の費用全体と、B)補助金やCSR上の価値を加味した新エネルギーの費用全体とを比較して安い方を選ぶことになるだろう。「いつか太陽エネルギーに移行する」という一点だけで、「割高でも”いま”それを買う」というのは考えにくい。そこで僕はコシュブルー氏に、新エネルギーへの移行が経済合理的になる原油価格や排出権価格についての考えを聞いたけれど、そればかりは氏にも分かりかねるとのことだった。
コシュブルー氏は「技術がなければ50年後にトタル社は消滅しているだろう」と話していて、僕は、エネルギー企業のような普遍的にも思える産業すらも技術への依存度を高めているという印象を受けた。もっとも、技術に依存していない産業などひとつもないのだろうけれど。MITという工科大学にいるせいも多分にあるだろうけれど、工学が果たす役割を改めて感じさせられる。トタルのレセプションには就職先としての売り込みという意図もあったようだけれど、工学博士課程の学生たちと並ぶとMBAの卵としては多少肩身の狭い思いを覚えないでもない。それは恐らく、経営が限られた資源の最大効用を目指していることに対して、工学が資源自体の創造を志向している、という差異によるのだろう。
無料のワインと食事に半ばつられて興味本位で参加したレセプションではあったけれど、ビジネスの中での競争というよりもむしろ、人類の進歩に関する工学とビジネスの競争を意識させられたことが、一番の収穫だった。ケタが違うんだよなぁ。120兆トンって、どんだけー。というか、地球が太陽から一年間に受けるエネルギーの量とか、それを石油に換算しようとか、議論の前提からして目からウロコでした。
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