- 2009-10-14 (水) 12:54
- MBA留学記


Source: Wikimedia (Hofstra zarb 11)
昨日、昼休みに何気なく出席した講演で感動する。この講演はSWIM(スローン・ウィメン・イン・マネジメント)という経営を志す女性のためのクラブの主催なんだけれど、僕を含めて男性もちらほら。登壇者のダイアン・ガーニック(Diane Garnick)氏はインヴェスコ社の投資ストラテジスト。「ランチにもありつけるし」なんて軽い理由で数ある講演のひとつとして顔を出した僕は、しかし、すぐに彼女のダイナミックな語り口と半生、として人生哲学に魅了される。
メリル・リンチやステート・ストリートにおける資産運用で評価を上げ、テレビや雑誌にも取り上げられるというガーニック氏、いつも聞かれる質問は「どうやって成功したの?」というものだという。
ニュー・ヨークの貧しい母子家庭で育った彼女は、ある日、裏庭で夢想に耽っていたという。「もっとお金があったら」とか「ママがもっと優しかったら」とか。ところが夕食だと呼びつけられて戻ると、出されたのは紙皿の上のホット・ドッグで、「ケチャップはないからね!」と母親に怒鳴られたという。「こんなの最低(This sucks)」という思いが彼女の原点のようだ。ところが、ガーニック氏は15歳で長女を出産し、中学校を中退。
スーツを決め込んだキャリア・ウーマンを目の前にして、僕は目と耳を疑う。ウォール・ストリートはおろかメイン・ストリートでだって、中学中退の10代の母親が成功するのは大変だろうに。ところが、ガーニック氏のエネルギーはすごい。出産後に学校に復帰して、4学年分を2年間で修了して高校を卒業。高校卒業後は数年間子育てをして、地域のカレッジに進学。2年生の時にUSAトゥデイ紙の「スター学生チーム」に選出される。
ガーニック氏の真骨頂はまさにここなのだけれど、USAトゥデイ紙の取材で将来の夢を訪ねられた彼女は「連邦準備制度理事会の議長」と答えて周囲を笑わせたという。振り返って彼女は、「もしあの時に私が『ええと、どこかの銀行の支店のマネージャーかしら』と答えていたらそれすらも実現できていなかったでしょう」という。笑われるような大きな夢と、それに向かう小さくても具体的な一歩――それが成功の鍵だ、と彼女。
お腹が空いた人には食べ物をあげることができるけれど、希望がない人に希望を与えるのは簡単ではない、とガーニック氏は言う。彼女自身も、多くの良き指導者たちに出会っていなければ彼女の人生は全く変わっていただろうという。ただし、一人の指導者に多くを期待しすぎるのはリスキーなので、「現代ポートフォリオ理論」に従って(笑)、それぞれの良いところを学ぶために良き相談相手を何人も持ったという。
さらにガーニック氏は、自分の特性とハートに沿ったことをすれば必ず成功するし、そうでないものをいくらやってもダメ、という。彼女は、人とコミュニケーションするのが大好きで、さらに相手を和ませる能力があるという――僕たちはそれを目の当たりにしている。そしてガーニック氏はその例として、ユーモアのために硬い社風のアメリカン航空で評価されなかった客室乗務員が、サウスウェスト航空に移って大成功した話をする。
確かに企業の文化を変えることもできるかもしれないけれど、そんなことに才能を費やしていたら、「あなたが」本当に実現すべき成果が実現できないでしょう――という。
そして話はより具体的な助言に移って、採用面接や報酬交渉のコツを伝授してもらう。面白いのはガーリック氏、学生時代に15回の面接を受けて16社から内定をもらったという。1社は面接すらしていないのに「あなたの噂を聞きました。当社に来てください。」とオファーを出したらしい。ちなみに報酬交渉のコツは、自分が追加した収益と自分にかかる間接費を明確に把握することだという。
「私はXドル貢献しました。もちろん経理部や法務部にYドル払わないといけないのもよく分かります。けれど、X‐Yドルのうち幾らかは私たちで分けましょう」というのがガーニック流らしい。逆に「教育費や家賃でZドル必要なんです」とか「私はあの同僚より働いています」というのは「で、だから?」で終わってしまう上に印象も悪いので逆効果だとか。
そんな職場での少々世知辛い(?)テクニックを紹介するガーニック氏、一方ではレディース・イン・レッド(The Ladies in Red)という、独身女性による社会貢献の団体を立ち上げている。そのウェブサイトで彼女は次のように書いている。
貧しさの中で育ったせいで、私は、車や家を持つ人たちだけでなく、ただ食卓に食べ物があるという人たちですら、分け与えるべきものを持っていることが分かるようになりました。(略) 今夜お腹を空かせて寝る子どもたちにとっては、お腹が鳴らないことが豊かさなのです。そんな子どもたちは、あなたが援助を始めるためにはまずひと財産築かなければならない、などとは思わないでしょう。
まさにそんな子ども時代を送ったであろう彼女が、本当にひと財産築いて、今それを社会を還元しつつある。さらに彼女が中学生の時に生んだ長女と、その後に生まれた次女たちはいま、大学院で精神科医だかセラピストだかを目指して勉強しているという。自分の生活を支えられて、娘達を学校に行かせて、さらに彼女たちが世の中の役に立つことを目指しているなんて素敵でしょう――とガーニック氏は笑う。逆境に負けない底力の持ち主ってのは凄いなぁ。脱帽。
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