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生命力としての妄想力

Dilbert.com

リンクを経由して拝見したchocolamintさんのブログで、次のような戦慄の記事を発見。

最新のHARBUS(HBSの学級新聞)には、在学中に3回も自殺しかけた卒業生の話が載っていた。授業を休み、ベッドにこもって泣くばかり。泣いてる内になぜか気分がスッキリし、「そうだ死ねばいいんだ」と思いたち、チャールス川にかかる橋まで行くものの飛び降りられず。それからしばらく、授業に出たり出なかったり。出席しても、教授の話を聞かず、死ぬ方法ばかりを考えたそう。「一体何が楽しくてこんな所に来たのか」「クラスメートの手の挙げ方が嫌だ」と泣き暮らし、教務課(?)の助けがあってやっとヘルスケアセンターに行ったそう。

怖い世界です。でも、「一体何が楽しくてこんな所に来たのか」というのは全く同感。午後11時に閉店間際のカフェに駆け込み、売れ残りのサラダなんかを夕食として食べながらケースを読んだりしていると、「何てこった!」という気持ちがしてくる。しかも読んでいるケースは、一生縁のなさそうな業界の話だったりする。これを生き抜くには妄想力がないとダメだなぁ、なんて思ったり。

ディルバートの漫画の通り、MBAというと「僕ちゃんは経営の専門家ですよ。なにしろ、(当社とは)全く違う状況の事例研究を読んできましたから。」なんて揶揄されうる側面もあると思う。今も僕が近所のタコス屋で読んできたケースは、1960年代アメリカの発電タービンの価格下落についてだったりする。僕が発電タービンを売る可能性は――ゼロとは言わないまでも――低そうだし、仮にそうなったとしても、40年前の事例がそっくりそのまま通用するとは思えない。

もちろんミクロ経済学的な観点でのこのジェネラル・エレクトリックとウェスティングハウスの事例は面白いのだけれど、笑ってしまったのが別紙1につけられた巨大タービンの絵。計数資料の前にやや唐突に挟まれたこの絵、ミクロ経済学の授業で議題に上ることはないだろう。にも関わらず、ご丁寧にも、機械の横にはある長さの線が描かれていて、手書きで「約6フィート」と添えられていた。要は「人間の大きさがこれくらいですよ」ということで、長さ何十メートルもありそうなタービンの臨場感を演出しようとしているようだ。

これは妄想への餌だ。そして、それ以外の何物でもない。この巨体が――たぶん地鳴りのような重低音を響かせながら――数年前の倍の発電能力にあたる50メガワットを生み出していくのだ。お値段は10億円超で受注から納入までの期間は平均2年。この巨神兵の横に立って「なぎ払え!」とか言いいながらスイッチをポンしたら、さぞや楽しかろう、と思う。

Turbine

そんなことを考えていたらニヤケてしまいそうな気がして、ミクロ経済学のケース読みながら独りタコス屋でニヤニヤするなんて正気の沙汰じゃないぞ、と自分を戒める。チャールズ川に飛び込もうかと思うほど悩み詰めてしまった誰かには申し訳ないくらいアホな話だけれど、それぞれにギリギリの瞬間を生きているなぁと思う。添付資料に書き足された6フィートの線分と、それが生む妄想が、どれほどの慰みになることか。

この記事を書き始めたときは、「全く違う状況の事例研究」に対して臨場感を持って対峙することで学びが最大化される。この想像力すなわち妄想力はビジネスにおけるリテラシーになる、という論旨を展開するつもりだった。けれど、僕は発電機の大きさを想像するに留まらず結局、値崩れするタービンに対して「どうした それでも世界で 最も邪悪な一族の末裔か!」と心の中で叱咤する始末なので、リテラシーなどという大仰なことを書くのはやめておく。

おちこんだりもしたけれど、私はげんきです。

kiki

(c) United Feature Syndicate, Inc., (c) 二馬力・GH, (c) 角野栄子・二馬力・GN

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