- 2009-11-15 (日) 1:35
- MBA留学記

城繁幸氏のブログ記事「とりあえず「体育会優遇」という会社には、非体育会は行かない方がいい」を読んで、こちらで気づいた「士官系」というカテゴリーを思う。例えばスローン校で親しくしている何人かは陸軍士官学校の出身で、リーダーシップやチームワーク、そして彼らのネットワークには、日本の「体育会系」にも似た、けれどもそれ以上に強いカラーを感じる。僕は筋金入りの非体育会系だけれど、かねて体育会系人材には敬意を抱いていたので、新たに視野に入ってきた士官系と合わせて言及したい。
スローン校では、7人ほどの1年生スタディ・グループ(小学校の「班」みたいなやつだ)につき1人、「パイロット」と呼ばれる2年生がつく。オリエンテーションから中間試験、そして就職活動に至るまで良き指導者役となってくれている。そして僕のグループのパイロットであるTが、初めて出会う士官系だった。彼は生徒会の役員を務めていて、そのために夏休み返上で、我々の始業前のオリエンテーションに付き合ってくれた。笑顔の似合う頼もしい相談相手で、頼みごとはすぐ聞いてくれる。
中間試験直前には「みんな大変だろうがこれを超えたら楽になるから頑張れ!」なんてメールを送ってくる。ちなみに、この激励メールを学校で受け取った数時間後、午前1時くらいに階下のロビーに降りたらTが独り、彼自身の試験勉強をしていた。僕は「全然楽になってないじゃん!」と言って、二人で笑った。学年は違えど、辛い状況を一緒に生き抜くには有難い兄貴分といった感じだ。だから、参考に見せてもらった彼の履歴書にイラクで部隊を指揮した実績を見つけても特段驚かなかったし、むしろ、さもありなん、と思った。
企業は軍隊みたいなものだとか、あるいは、軍隊も企業みたいなものだ、と短絡させるつもりはない。けれどいずれも、人材や物資を采配しながら組織の目的を達成するという点では変わらない。目的以外に組織としての違いと言えば、プレッシャーの度合いだろう。やはり陸軍士官学校を出てイラクにも駐留したクラスメイトは、組織論の授業で、陸軍の綿密な演習について話していた。「作戦遂行に落ち度があると仲間が撃たれる」と言っていた。大変な職場はたくさんあるだろうけれど、競合に撃たれる、というのは軍隊かマフィアくらいだ。
パイロットのTは卒業後は投資銀行に進むとのことで、これもまた大変な職場だろうけれど、まったく余計なお世話ながら「彼ならやっていけるだろう」と思う。彼は金融の知識は全くなかったそうだけれど、金融論を専攻して猛勉強したようだ。ちなみに別の機会で来校したその投資銀行のバンカーは、Tのことをよく知っているといっていた。彼もまたウェスト・ポイント、つまり陸軍士官学校の出身だそうだ。さらに別の機会に来校した別の投資銀行の担当者もウェスト・ポイント出身で、折に触れて卒業生の強いネットワークを感じさせられる。
実は彼ら士官系が折に触れて見せるリーダーシップやチームワークそしてネットワークは、かねて僕が日本で見てきた体育会系の特長と重なる。もちろん一定の能力が前提となるだろうけれど、プレッシャーの高い状況下で確実に成果を挙げていくには、彼らのファイティング・スピリットには学ぶべき点が多いのではないかと、へなちょこな文化系の僕はつくづく思う。もうひとつ挙げると、体育会/士官系の人材は実践的な議論に長けていて、「で、なんなの?」という「ヤマなしオチなしイミなし」の議論に陥る頻度は文化系よりも少ないと思う。
城氏が書くような「大卒だったら用がなくても21時まで席で待機」なんてトホホな企業が未だ生き残っているのかどうかも知らない。ただ、トホホな組織は文化系方面――例えば、延々と続く不毛な議論――にも幾らでも行けるし、体育会系方面――例えば、無駄な残業――にも無限に突き進める。いずれの方面に、トホホな重力がより強く働くか、という点ではどっちもどっちなんじゃないだろうか。体育会方面のダメさの方がコミカルで分かりやすいから、文化系方面のダメさが陰鬱で目立たないというのはあるかも知れないけれど。
ともあれ、スポーツや戦争は特に時間の制約とプレッシャーが強い環境だと想像するので、そこで鍛えられた人材と強いネットワークは、僕が企業だったら欲しいよなぁと思う。かつて陸軍出身の瀬島龍三氏を会長に据えた伊藤忠商事が「新卒採用「体育会学生」欲しい」と言うのも、それぞれに一理あるのではないだろうか。
ちなみに士官系の統率力という点で、最近読んだ渡辺千賀氏のブログ記事「人間は危機に直面すると固まるらしい」を思い出した。これは文化系はおろか、体育会系というよりも、まさに士官系の仕事力――あるいは人間力――だなぁと思った。もちろん本人が犠牲になるまでの必要はないのだけれども、人を鼓舞して動かす力、という点では士官系に一日の長がある気がする。新入社員程度ならいざ知らず、いずれ「人を動かす」となった時を想像すると、士官系>体育会系>>>(頑張れば越えられる壁)>>>文化系、という図式は当たらずとも遠からずじゃないだろうか。
WTCに数千人の社員がいながら、死者が13人しかでなかったモルガンスタンレーでは、「リスク管理責任者」が元軍人で、戦場で茫然自失する部下を統率した経験を持つ彼が、拡声器で「動け動け」と連呼し続け、最後は歌を歌って励まして、やっとのことでみんな階段を下りて行ったそう。「責任者」氏は、「他の誰かから力強く行動の指示」が必要である、ということを実戦経験で知っていたのですね。(ご本人は最後までWTCに残り亡くなった)。
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