- 2009-12-19 (土) 23:56
- MBA留学記


11月26日と27日の2日間、MITヴェンチャー・キャピタル・プライヴェート・エクイティ・クラブ主催のロンドン視察旅行に参加。訪問先は、バイアウト・ファンドのKKRキャップストーン、カーライル、エイパックス・パートナーズ。ヴェンチャー・キャピタルのNBGIヴェンチャーズ、ズーク・ヴェンチャーズ。そして、セカンダリー・ファンドのコラー・キャピタル。早朝のヒースロー空港に到着するや否や目の回るようなスケジュールで各社を回る強行軍だったけれど、10代以来の社会科見学は有意義だった。
訪問先の中には以前に仕事で訪ねたところもあって、学生というシガラミのない立場で彼らの話を聞けるのは貴重な機会だと思った。とは言え、学生ゆえシガラミもなければお金もない。感謝祭の休暇のためにアメリカを飛行機の航空券はどれも高くて、僕は同級生2人とカナダのトロントを経由するフライトに乗った。ヒースロー空港で何人かと合流。僕は空港から市内へヒースロー・エクスプレスという特急で行くことを提案したのだけれど、数ポンド安いヒースロー・コミューターといういわば快速で行くことに。この街のホテルの高さも皆の不満のタネ。僕も、前職の同僚の家に避難する前は、半地下でおまけにシャワーが共同の薄暗い安宿に1泊した。そういう貧乏旅行をしていると、なおさら、バイアウト・ファンドの豪華な会議室はまるで別世界のように見える。
それぞれのファンドはかなり突っ込んだ話をしてくれたのに加えて、同行した同級生のなかには別のプライヴェート・エクイティの出身者もいたりして、質疑応答はかなり密度の濃いものとなった。小学生の工場見学も驚きと学びに満ちたものだったけれど、それぞれの業界で経験を積んだ大人たちの会社見学も面白い。黎明期あるいは成熟期それぞれの企業について、資本の側から成長や変革を促すダイナミズム。資産運用会社の利潤追求動機が、結果として実物資産の生産性を上げる方向に寄与しているならば、後者の果実を受け取るのは社会全体に他ならない。
資産運用の側から見ると、上場株式でも債権でもないこれらの投資は代替的投資ということになる。けれども、事業の生い立ちに立ち返ると、プライヴェート・エクイティこそが一義的な投資活動に見える。そうして事業が始まった後に、株式が上場したり債権による資金調達が可能になったりするのではないだろうか。ともあれ、どちらが「代替的」かという真贋論争は、利潤追求動機は悪か否か、というのと同じ暇潰しのネタでしかない。肝要なのは、これらの手段やプレイヤーをいかに、例えば既存産業が成熟した日本の産業の再活性化につなげていくか、ってことなんじゃないかな。
その上で面白いと思ったのは、セカンダリー・ファンドの整備だ。非公開株式はその宿命として流動性が低い。
有限責任パートナーとして参加したファンド投資で、同ファンドの保有株がいつまで経っても上場しないものだから、僕らも僕らでいつまで経っても足を洗えない、ということがあった。アメリカの無限責任パートナーに「抜けたい」と言ったら、「じゃあ持分比率に応じた現物株を渡す」と言われてそれもお断り。上場のメドの立たない非公開会社の、雀の涙ほどの持分をもらうなんて自ら進んでさらに流動性を下げているようなものだ。
非公開株投資をめぐるこの膠着を、いわば廃品回収業として投資持分を二束三文で買うことで解決してくれるセカンダリー・ファンド、日本でプライヴェート・エクイティを活用するには必要なインフラだろう。とは言え、企業の最終処分である会社解散は法務の出番だ。コラー・キャピタルで「投資除却時の法務処理にどう対処するのか」と質問したら、社内で専任の弁護士を抱えていると言っていた。日本の会社法が会社清算についてどう規定しているか寡聞にも――しかし幸なことに――知らずに来たけれど、勉強した方が良さそうだ。
株主は移動するものだし、会社は清算されるものだ。安定株主で成長を続けてきた日本株式会社が新しいマインドセットを模索するのに、プライヴェート・エクイティとそれを取り巻く生態系はいい示唆を与えてくれる気がする。
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