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エキゾチシズムとフィギュアを超えて - アニメ映画「サマーウォーズ」プレミア

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3月1日、MITで上映されたアニメ映画「サマーウォーズ」のニュー・イングランド地区プレミアに参加。細田守監督も来校し、大講堂での上映後、1時間あまり観客との対話に参加される。監督はさらに1時間以上もポスターへのサインなど観客の求めに応じ、ファンを喜ばせていた。その間、僕はプロデューサーの齋藤優一郎氏に話を伺う機会にも恵まれ、日本コンテンツの海外展開について貴重な示唆を得た。また、人と人とのつながりが、僕をキャリアの原風景へと立ち返らせてくれた。

このプレミアはMITの比較メディア論(Comparative Media Studies)とMIT/ハーバードのクール・ジャパン研究プロジェクト(MIT/Harvard Cool Japan Research Project)との共催。比較メディア論のイアン・コンドリー教授も、通訳兼モデレーターとして細田監督に並んで登壇。プレミアの様子はLilacさんのブログ記事「MITでアニメの研究してる人たちと「サマーウォーズ」を見た」に詳しい。

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実は当日僕はクオンツ投資の専門家であるジョン・デトア教授との夕食という先約があり、残念ながら作品自体は最後の4分の1ほどしか観れなかった。けれども、大講堂のドアをそろりと開けた瞬間に、僕はプレミアの空気に飲み込まれた。定員560人という講堂は満席で、床に座っている人もいた。そして観客たちは主人公たちが活躍すれば拍手を送り、敵が盛り返せば溜息をもらす。劇場はそもそもソーシャルな経験だけれど、そこにはライブ会場のようなバイブがあった。

クライマックスでは思わず目頭が熱くなる。それは途中から観てもなお伝わる物語の強さや画面から溢れる色彩の鮮やかさのためであり、また、日本の作品が観衆の視線を釘付けにしていることへの勝手な感慨のためでもあった。ましてや、その視線の先には日本の田舎の田園風景が広がっているのだ。質疑応答で、細田監督に「海外展開のために制作上意識した点はあるか」と伺った。すると「作品は商品ではなく公共的なもの。いい作品には普遍性がある。海外向けに作品を作ろうとすると多くは失敗する」という答えが返ってきた。

別の学生が「萌えアニメのニッチな市場をどう思うか」と尋ねると、「アニメ産業が観客を限定しすぎることで、アニメという技術がもつ可能性を生かせていない」と細田監督は言い、「観客から、監督が思ってもみなかったことを引き出す面白さ」があると話す。また、監督は物語の中心をなす田舎の家族と携帯電話のゲームサイトとについて、「インターネット上の交流は本物ではなく家族の交流こそが本物、という訳ではない。その両方を肯定したかった」という。この温かな肯定は通奏低音であり、またバーチャルとリアルそれぞれのクライマックスではファンファーレとして高らかに鳴っていた。

会場で質問をしたインド系と思しき学生は「映画を観て自分の家族を思い出しました」と感想を言う。「現地化」という小細工ではなく、人間の感情の普遍性とコミュニケーションの時代性が、この作品をして世界で賞を得るに至らしめたのだろう。表現手法としてのアニメがクール・ジャパンと呼ばれようと、あるいはそれがソフト・パワーを担わされようと、結局のところ、コンテンツにとって人間と時代とへの洞察を超える競争資源はないのだろうと再認識させられる。

これは欧米市場向け商品開発という短絡的な輸出主義でもなく、エキゾチシズムを売りにした民芸品商売でもない。子どもがオモチャを欲しがるような作品でもなければ、マニアがフィギュアに大金を注ぐような作品でもない。こんな風に作家性が前面に出て、それでいてエンターテイメントとして十二分に成立する本作のようなアニメが、是非もっともっと商業的にも成功して欲しい。いくら政策論を戦わせたところで、成功の事例ほど強く業界を突き動かすものはないだろうから。

プレミアのあとで細田監督と、僕がロサンゼルスで半年にわたり日夜お世話になったあるプロデューサーのことをお話する。彼はそれまで事業投資や製作投資の管理をしていた僕に、初めて実地のアニメ・ビジネスを教えて下さった恩師で、細田監督とは何作品も仕事をされている。あれから4年が経ったのかと思うと、感慨と焦りの入り混じる不思議な気分になる。日本のメディア/コンテンツ産業は大きく動いているし、これからもっと変わるだろう。バトンを受けるリレー走者の気持ちで、僕もまたそのスピードへと加速していきたい。

Credit: © 2009 NTV / Madhouse / Kadokawa Pictures

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