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エミリオ・ペレスと言葉への執着 - NYアート・トレック #1

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3月7日から8日にかけて、以前オークション・ハウスのクリスティーズに勤務していた2年生が中心となってマンハッタンへと美術業界の視察旅行に行ってきた。チェルシーの画廊やクリスティーズを訪問して話を聞いたり、アーモリー・ショーという美術品見本市を見学したり、美術鑑賞に加えてビジネスの側面も学ぶ、という趣旨だった。自由時間には、喧騒のマンハッタンに戻ってきたMoMAを遅れ馳せながら参拝。それぞれの訪問先で、面白いと感じたことを書き留めておこう。

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最初の訪問先はチェルシーにあるギャルリ・ルロン(Galerie Lerong)で、エミリオ・ペレス(Emilio Perez)というアメリカ人画家の個展を見学。このアメリカ人画家はアクリル絵の具の彩色とラテックスの切り絵を組み合わせた抽象画を創作している。路地裏のグラフィティを思わせる勢いと、ミキサーを覗き込んだような複雑なうねり。この画家はサーフィンをすると知って、うねりは海が与えたインスピレーションかと思う。

面白いのは絵の表題や制作年を示した銘板が一切ないこと。このことをキュレーターに尋ねると、銘板の掲示については美術界でも大きな議論があるとのこと。多くの人々は注意深くラベルを読んだあとで作品を「一瞥して」過ぎ去ってしまうのが好ましくないので、この個展では銘板を掲げていないという。

この話は耳が痛い。美術展最大の人だかりは往々にして冒頭にある「開催の辞」の前にあったりする。僕にも「言語情報に対する貧乏性」とでも呼ぶべきものがあって、「油彩・キャンバス」なんていう、一目瞭然の情報さえもついついありがたがって読んでしまう。限られた鑑賞時間という制約の中で、作品自体に注ぐべき注意が銘板に向いてしまうのは確かにもったいない話だ。

この画廊では題名や制作年や画材を書いた紙を希望者に渡していた。それによると僕の好みは2009年制作の「Only After Dark」という作品で、深い眠りの底へと沈んでいく意識を思わせたので、寝室に向くのではないかと思ったりした。しかし、この印象は題名を知る前に感じたものの、題名を見て「我が意を得たり」という気分になる。絵画鑑賞って、別に、我が意を得たりとか得なかったり、という話じゃないんだけれど。

けれど。僕たちは言葉が想起するイメージから自由になれない。ならばせめて、まずは銘板を読まず「ノイズ」のない状態で作品を観たら、より自由な美術体験になるのではないか。表題が湧き立たせる着想とは、それから遊んでも遅くはない。これは同じことは音声解説にも思うけれど、「先に言葉で知りたい」という欲望は本当に抗いがたい。言葉への執着から、いちど自由になってみたい。

他には、このように同じ手法で制作する作家に対して画商として作風について提案することはあるのか?とも質問してみた。それによると、同じようなことを3年間続けるアーティストに対しては、芸術家としての成長のために新しい挑戦をしてみてはどうか、と助言することはあるそうだ。但し、より売り易くするための示唆は敢えてしないそうだ。

なお、画家に対してサラリーを提供することはなく、あくまでも販売手数料をベースとしたビジネスとのこと。

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