Home > MBA留学記 > ケン・プライスと本能のカタチ - NYアート・トレック #2

ケン・プライスと本能のカタチ - NYアート・トレック #2

IMG_0282

ギャルリ・ルロンの次に訪問したのは、マシュー・マークス・ギャラリー(Matthew Marks Gallery)。彫刻家ケン・プライス(Ken Price)の作品を展示していた。ディレクターのジャクリーン・トラン(Jacqueline Tran)氏に美術家との関係や美術品市場の動向について話を聴く。一方で、トラン氏が「セックスに対する固執」と評するプライス作品の本能的な造形は、まさに言葉を超えて僕の脳髄を刺激するものがあった。これは彫刻の不思議だ。

IMG_0285

先週、2ちゃんねるの話題を紹介するサイトで「深海生物エロすぎワロタwwwwwwww」というスレッドが引用されていた。問題の生物はツバサゴカイの未記載種らしく、確かに写真をブログで紹介していいものかと一瞬迷う容姿。

201004100941170000

ある種の曲面が人間の感性に働きかける強さや、あるいは、ただのカタチに興奮する僕たちの、ちょっとマヌケでそれでいて憎めない素直すぎる心。これらを人間の側から焙り出しているのがケン・プライスだろう。

fb5d9653

画廊も、これらの作品については鑑賞の一環として触って欲しい、と言っている。幾つかの作品は10~20万ドル(900万円~1,800万円相当)ということで決して安い買い物ではないけれど、触っているうちに欲しくなってしまうコレクターも出てくるのだろう。なお、展示作品の選定や配置については作家は基本的に画廊に一任しているものの、一部で直接の指示も出すという。冒頭の写真の作品について、画廊側はより小さな台座を勧めたものの、彫刻家が大きな台座にこだわったという。

また、画廊としては展示作品が「一線級」で、倉庫にある在庫作品が「二線級」だという誤解を持たれないようにすることが商業上の課題だと言う。様々な作風を展示しようとすると、スペースの制約から似たものをカタログのみでの案内とせざるを得ず、結果として同作が格下に思われることがあるという。在庫作品にも好きなものがあるかも知れないので、画廊では在庫についてもぜひ尋ねて欲しい、とのこと。

なお、美術品相場は景気動向に沿った循環を見せるとのことで、マシュー・マークス・ギャラリーなど大手画商は目下の景気後退を機に保有作品を増やしているとのこと。一方、作家自身と専属契約などを結ぶことはなく、「一部の画商は多くの作家を抱えすぎている」というのがトラン氏の見方。

また、作家との利益配分もキャリアを重ねたベテラン作家ほど作家側に有利で、これはキャリアに比例して作品販売の予測が立てやすくなるからとのこと。反対に、若い作家は販売の予測が立てにくい上に、自分への扱いに過敏であったり個人的・精神的なサポートさえも必要としたりするために、画廊として多くの労力を割かざるを得ないとか。手数料の傾斜配分について、一理ある説明。

トラン氏が強調していたのは、コレクターとの関係構築。好みに合いそうな作品があったら既存顧客に案内したり、あるいは、これからコレクションを始めようとする若い蒐集家の相談に乗ったりすることで、長期的な関係にコミットしているとのこと。

IMG_0288

ギャラリーの前の歩道に、なぜかウサギの絵。快晴の空のもと、歩道に現れたウサギのカップルに、なんとも楽しい気分にさせられる。ハートの下には爆弾が横たわっているのだけれど。近所にはバレンシアガのブティックもあり、これが画廊のようなテイスト。我々の洋服もまた現代美術ですよ、と立地に証言させているようで、上手いなぁと思う。それがどれほど売上につながるのかは分からないけれど。

IMG_0294

ガゴシアン・ギャラリー(Gagosian Gallery)の前で、「このギャラリーがダミアン・ハーストを世に送り出したのよ」と同級生のひとりが教えてくれた。確かに玄関の脇で、一目でそれと分かるハーストのキラキラしたオブジェが鎮座していた。これを見て、いつか自分もダミアンのように、とギラギラと野心を燃やす若い芸術家も多いだろう。

IMG_0295

IMG_0296

そのあと、幹事が気を効かせて予約してくれた、この界隈では人気というボッティーノ(Bottino)というイタリア料理店で昼食にありつく。小さな裏庭に面したサンルームに降り注ぐ太陽は、ようやく寒い冬が終わったことを伝えていて、それを合図に僕らは昼からワインを空ける。勉強から開放され、心動かす美術に出会い、久しぶりに生きた心地を味わう。こんな休日こそ、本能のカタチだ。

出典: matthewmarks.com, (ツバサゴカイ:出所不詳)

関連記事:

blog comments powered by Disqus

Home > MBA留学記 > ケン・プライスと本能のカタチ - NYアート・トレック #2

Return to page top