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アーモリー・ショーと文化力の「スシ化」 - NYアート・トレック #3

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ボッティーノでのワインが誘う睡魔に襲われるままにマイクロバスで寝て、起きたらニュー・ミュージアム。この建物は面白いなぁ、と寝ぼけ眼に思ったら、建築家は日本人の妹島和世氏と西沢立衛氏で、この二人は後日3月末にプリツカー建築賞を受賞。このトンガッた美術館で酔いを醒まして、その後はアーモリー・ショーへ。クール・ジャパンにちょっと思いを馳せたあとで、全くクールでもなんでもない、いつもの夜を過ごす。美術のくれた刺激が残す余韻は、それでも、一日の終わりまで響いていた。

ある階に足を踏み入れたら、ひとりの女性が歌っていた。一瞬ちょっとヘンな人がいるのかと思ったけれど、そのパフォーマンスはティノ・セーガルという芸術家の作品で、彼女はそれを「展示」しているのだった。現に彼女は「This is propaganda, you know, you know」と歌ったあとで、「ティノ・セーガル、This is Propaganda、2002年」と喋る。

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この「スキン・フルーツ」という企画展は、ギリシア人コレクターのダキス・ヨアヌー(Dakis Joannou)氏のコレクションを、ジェフ・クーンズ(Jeff Koons)がキュレーターとして展示したものだという。全体的にブッ飛んだ作品が多く、僕自身の好みとは必ずしも一致しなかったけれど、なかなか楽しかった。屋上で晴れた空に向かうのも気持ちよくて、アップタウン方面を眺めると遠くにクライスラー・ビルディングの尖塔が見えた。

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次に訪れたのは美術品の見本市であるアーモリー・ショー(Armory Show)。このアート・ショーは20世紀初めにレキシントン街の武器倉庫(Armory)開催された歴史あるものだそうで、今はハドソン川沿いの埠頭で開催されている。隣接した2箇所の展示場は所狭しとブースで区切られていて、それぞれが絵画やビデオ作品やインスタレーションを展示していた。

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日本家屋と人物が不思議に組み合わさった写真が目に止まったので作家を見ると、レアンドロ・エルリッヒ(Leandro Erlich)というアルゼンチンの写真家で、この作品を扱っているのはルシアナ・ブリトー・ギャレリア(Luciana Brito Galeria)というブラジルの画商だった。撮影地は新潟県の十日町だというけれど。翌日のクリスティーズでも日本の浮世絵や時代劇をモチーフにしたそれでいてポップな作品があり、これはイギリス人アーティストによるものだった。

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2時間ほどの時間はだだっ広い会場を全部見るにはまるで足りなかったけれど、その中で日本人作家の作品として見つけたのは宮島達男のLEDのデジタル・カウンターを使った作品くらいだった。村上隆や奈良美智、あるいはオノ・ヨーコや草間彌生に続くような日本人アーティストがもっと存在感を放つのかと期待していたけれど、僕の見た範囲がたまたまそうだったとしても、日本人アーティストの作品は想像よりもずっと少なかった。

ちなみに、歩き疲れた人たちのための休憩所のようなものもところどころにある。下の写真の場所には巨大な赤いシャンデリアがぶら下がっていて、これも誰かの作品なのだろう。

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ともあれ。それを「クール・ジャパン」と呼ぼうが呼ぶまいが、日本の文化資源がそれなりの魅力を持っていることは確かだ。けれど、そのことが即ちコンテンツでの外貨獲得につながるという発想は早計だと思う。スシが好例で、スシをネタに日本国外で一番稼いでいるのは日本人じゃなくて、韓国人か中国人だろう。それが良いとか悪いとかじゃなくて、魅力ある文化というのはそれゆえに拡散していくので、文化力を特許や著作権のような発想で「マネタイズ」するのは難しいと改めて思わされた。

強いて言えばフランスの原産地統制呼称(AOC)のように、シャンパンをシャンパーニュ地方に厳格に紐付けるのも一策だろう。けれど、それで全てのスパークリング・ワインからフランスが収入を得られるというわけでもない。「クール・ジャパン」の議論って、そういうスピル・オーバーをどこまで想定しているのだろうか。つまるところは、どれだけ力強い作品が出るか、以外の何物でもないのだろう。なんて埠頭を出て思う。夜の風はまだ肌寒かった。

ホテルの部屋に早めに戻って、宿題をやる。手強い分量で食事のために外出する時間も惜しく、夕食は出前。紙箱に入ったチャーハンを掻き込んでコーラで流しこんで、レポートを書く。昼は昼で「これこそが人生!」と思った反動で、夜は夜で「これこそが人生…」と別のニュアンスで思ったりもするけれど、美術に触れて生き返った。感謝!

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(c) Leandro Erlich

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