The SYNTAX ERROR Blog » 暮らす http://www.thesyntaxerror.net MIT Sloan / London Business School MBA留学記 Mon, 22 Nov 2010 02:24:03 +0000 http://wordpress.org/?v=2.8.6 ja hourly 1 浮沈のオーヴァーブッキング – 沈 http://www.thesyntaxerror.net/2009/08/16/225420 http://www.thesyntaxerror.net/2009/08/16/225420#comments Mon, 17 Aug 2009 03:54:20 +0000 Syntax http://www.thesyntaxerror.net/?p=1015

「浮沈のオーヴァーブッキング – 浮」の続き、つまり、不運な方。ボストンのローガン空港からバスと地下鉄を乗り継いで新居の最寄りの駅へ。グーグル・ストリート・ヴューで何度も見た通りを初めて歩き、アパートの入口で呼鈴を押す。うーん、応答がない。まぁ学校にでも行っているんだろう、ということで近くのスタバへ。まだ携帯電話はないけれど、ここなら有料の無線LANが使えるし、何よりも気兼ねなく時間も潰せる。要するに僕は、まだ事態の行く末を甘く見てたんだよね。

ボストン・レッド・ソックスの旗が掲げられたアパートを後にして、駅の向こう側のホテルへ。まずは入居に関して連絡を取り合っていた2年生のFに電話をかけようと思ったわけだ。まだ携帯電話はないけれど、ホテルなら公衆電話のひとつもあるだろう、と。ところがロビーに電話は見当たらず、受付で聞いても「最近アメリカではみんな携帯電話を使うから、公衆電話はこの辺りではほとんど見ないわ」なんて言われる。そうかなぁ? むしろ僕は日本でよりもアメリカでの方が公衆電話をよく見かける気がするけど。ともかく、トイレで用を足してホテルを去る。公衆に開かれたトイレなら、イエス、日本と比べればアメリカの方がずっと少ない。あと自販機もね。まぁいいや。

ともかく電話は諦めて、スタバでPCを開き、「着いたんだけど留守みたいだ。何時くらいに帰ってくる?」なんてメールをFに打つ。しばらくすると、Fが「誰か彼を入れてやってくれ」なんてメールをルームメイトと思しき面々に送っているのをCCで受け取り、僕は彼の不在を知る。数日後に僕は、彼は夏休みで故郷のイタリアに帰っていたことを知るんだけどね。ともあれ、30分と経たないうちにRという人から「私は家にいるから呼鈴を押してくれれば開けるわ」なんて返事が来る。そこで再挑戦。

呼鈴を押すとRと思しき女性が応答して、いま行くという。いや、遠隔操作で鍵だけ開けてくれればいいんだけど、と言う間もなく彼女は3階から降りてきてドアを開けてくれた。解錠のための電気系統は壊れているらしい。ともかく、年季の入った木製の螺旋階段を登る。それはちょっとパリの建物に似ていたけれど、パリなら螺旋の中心に辛うじて設置されていたであろう小さなエレヴェーターはない。そんなわけで僕はかなり頑なに断ったのだけど、Rは僕のキャリーオン・バッグを持って上がってくれた。僕は大きなスーツケースを引っ張り上げながらついていく。

3階のアパートで「今日引っ越すことになった者だ」と紹介すると、ちょっと驚いた彼女は「どの部屋?」。僕は「一番小さな部屋だと聞いているけど」なんて言うと、「その部屋はCがまだ使ってるわよ」と彼女。さて、今度は僕が驚く番だ。肝心のFはイタリアで、Rが電話をしても通じないし、とりあえず僕は居間に落ち着く。いや、全然落ち着かないけれど。しばらくするとCが――彼女もスローン校の1年生だった――帰ってきて、僕らの契約のオーヴァーブッキングを互いに驚く。僕は月初から契約したのに、彼女の契約は月末まで残っているという。やれやれ。

僕はCを追い出すつもりもなければ、そもそもこれは彼女の落ち度でもない。Fの責任を示唆しつつ、僕は彼女に「ともかくFとすぐ話さないとね」と言ったら、「いまイタリアにいる彼に出来ることは大してないし、『どこかで誤解があった』と弁明する以外ないだろう」と彼女。そして、「いま我々が持っている選択肢を検討しましょう」という。実に建設的。そして驚くべきことに彼女は、退去を早めて翌週の金曜にしてくれた。1カ月の重複が10日程になった。オーケー、10日くらいならソファで寝てもいいや。

そんな訳で、新居のオーヴァーブッキングというかなりトホホな理由から、僕の寝床はベッドからソファにダウングレード。この日の13時間のフライトはオーヴァーブッキングでプレミアム・エコノミーからビジネス・クラスにアップグレードされて、これは言わば椅子からソファへの昇格だ。ところがその直後、僕は10日間を個室のベッドから居間のソファに格下げになる。

「神の見えざる手」ってのが実在して、それが幸運と不運とをバランスさせてるんだなぁ、と思わずにはおれない。まぁ、この2つのオーヴァーブッキングに関しては、ちょっと「貸し」の方が多い気もする。けれども、もし市場の反動を信じるならばこれは上昇の兆候ってことだ。さぁ、建設的かつ前向きに行こう! クラスメイトとなるCから、僕が早くも教わったこと。

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仔犬がやって来る。ヤァ!ヤァ!ヤァ! http://www.thesyntaxerror.net/2009/07/22/143538 http://www.thesyntaxerror.net/2009/07/22/143538#comments Wed, 22 Jul 2009 05:35:38 +0000 Syntax http://www.thesyntaxerror.net/?p=976

僕も妻も実家で犬を飼っていたので、いつかは犬が欲しいねと言っていたのだけれど、ついにその日がやって来た。僕の留学で家が寂しくなるというこの機会に、ミニチュア・シュナウザーの仔犬を、妻への誕生日プレゼントとして一緒に選ぶ。パグ、ボストン・テリアなどなど吟味に吟味を重ねた末にトイ・プードルと悩んでシュナに決定。名前はアート。このーちゃんためにここ数日は何をしていても気もそぞろです。

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カナムグラとアブラムシ退治 http://www.thesyntaxerror.net/2009/06/21/170644 http://www.thesyntaxerror.net/2009/06/21/170644#comments Sun, 21 Jun 2009 08:06:44 +0000 Syntax http://www.thesyntaxerror.net/?p=890

久しぶりに家の裏の空き地を見たらカナムグラの楽園になっていて、しかも誰かがゴミ箱を捨てていたりして、植物と人間が好き放題にしていた。そこで僕は、その空き地に雑草キラー土(「キラーズ」と読む)を敷いて雑草が生えないようにすることにする。さらによく見ると、玄関横のグミの葉がアブラムシに食い荒らされている。これにはいよいよ無秩序への怒りがふつふつと湧いてきて、5月10日、いよいよカナムグラとアブラムシを退治することにする。

雑草キラー土は茨城のアトリエ近くのホーム・センターでその存在を知って気になっていたので、5月6日にアトリエに行った時に買い込んできた。18kg入りを5袋だから、合計90kg。これをわざわざ茨城から運んでくる。

空き地のカナムグラを引き抜いたらゴミ袋3袋分にもなったけれど、雑草キラー土を散布して表面を固めることで、この格闘も最後になると思えば苦にならない。根は太いもので直径1cm程もあって、さらにこれが縦横に張り巡らされていて、とにかく憎らしい。般若の形相でこれを鷲掴みにして手繰り寄せ、一本釣り漁師の気迫で引き上げる。小一時間ほどの格闘の末に一応の区切りをつけて、雑草キラー土を散布して2度の散水。これでカナムグラが人類に歯向かわなくなればいいのだけれど。

そして次はアブラムシ。グミの葉の穴は何かの病気かと思ったけれど、別の葉についた物体をよくよく見ればアブラムシ。アブラムシにも一分の魂があって、その存在も生態系では何らかの役割を果たしているだろうことも分かる。けれど、僕からアブラムシに対して言うべきことは一言、「山でやろう」だ。葉を食うなとは言わないが、オレの、グミの葉を、食うな。やるなら山でやろう。

駒場のカルティベイトでアブラムシ退治スプレーを買って散布。これは人間の身勝手かも知れないけれど、アブラムシもまた身勝手なのだ。平坦な戦場の上で、人間とアブラムシは今日も、等しく総力戦を戦っている。

]]> http://www.thesyntaxerror.net/2009/06/21/170644/feed 0 続・モンステラ http://www.thesyntaxerror.net/2009/06/21/162345 http://www.thesyntaxerror.net/2009/06/21/162345#comments Sun, 21 Jun 2009 07:23:45 +0000 Syntax http://www.thesyntaxerror.net/?p=900


2月に買った時はどこかいじけたような卑屈なような枝ぶりだったモンステラも、日当たりが良かったのか、2ヶ月ほど経つと「怪物」の名に恥じない堂々とした姿になってきた。その生長につれて鉢も狭苦しくなってきたように見えたので、4月25日、鉢変えをしてやることにする。

雨が吹き込むガレージで、プラスティックの鉢からゆっくり引き抜くと、根がぎっしりと詰まっていかにも窮屈そうだった。とはいえ根が詰まること自体はいいこととも聞くから、人間の主観で判断するのは僕の身勝手でしかないけれど。ともあれ素焼の鉢に植え替えると、モンステラ自身がどう思っているかはさておき、審美的にはずっと立派になった。

彼はこの2ヶ月で新葉を次々に出し、のみならず、その新葉がことごとく「切れ込み」入りなので、美的な進歩も甚だしい。買ってきた時は切れ込みのない葉が半分で、切れ込み入りの葉のそれもどこか中途半端だった。それが今や次々に見事な切れ込み入りの葉を生み出していて、妻は「私が愛情をかけたからモンステラが応えてくれた」と上機嫌。

値切って買われた身の上を知ってのことか、妻の歓心を買うモンステラのしたたかな人心掌握の術には敬服させられてしまう。そしてこの策謀の背後にある健気さが、ますます彼を愛らしく見せてもいる。うーん、僕まで術中にハマっちゃったみたいだなぁ。

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http://www.thesyntaxerror.net/2009/06/21/162345/feed 0
モンステラ http://www.thesyntaxerror.net/2009/06/21/160409 http://www.thesyntaxerror.net/2009/06/21/160409#comments Sun, 21 Jun 2009 07:04:09 +0000 Syntax http://www.thesyntaxerror.net/?p=898

2月12日、妻と散歩がてら、三宿の交差点にある花屋に立ち寄る。そこで妻がモンステラを探してもらったら、店内のジャングルから引っ張り出されたそれは、全体のバランスが悪くてちょっと貧相に見えた。そこで僕は1,600円というそいつを――それでも十分安かったけれど――1,200円に負けてもらった。そうやって値切ったモンステラでも一緒に三軒茶屋のキャロット・タワーに登ったりすると愛着が湧いてきて、帰宅する頃にはすっかり家族の一員になっていた。枝振り(茎振り?)がちょっと悪い分、なんだか手をかけてやらなきゃいけないような気がするんだよね。


デジカメのどこかのボタンを押したら、他はモノクロームなのに緑色だけをカラーで写すようになった。狙ったわけじゃないから威張れないけど、これってちょっと渋くてカッコいい。

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マンサク、グミ、ゴールドクレスト、カナメ http://www.thesyntaxerror.net/2009/06/21/153757 http://www.thesyntaxerror.net/2009/06/21/153757#comments Sun, 21 Jun 2009 06:37:57 +0000 Syntax http://www.thesyntaxerror.net/?p=892


4月12日、ビジネス・スクール受験も一段落したことだし、家に植物を置こうと思い立って駒場の花屋カルティベイトまで歩く。ここでグミ、マンサク、そしてゴールドクレスト、そしてカナメを買い、空き家になっていた鉢に植え替えて玄関脇に置く。これだけで一気に、生活に潤いが増したような気がするから不思議だ。「気がするから」と書いたけれど、そういう気がしたら事実としてそうなのだろう。潤いってやつは。

カルティベイトでは、ゴールドクレストの苗木を3鉢、そしてマンサクを1鉢買う。ゴールドクレストは育てやすいと聞いていたし、マンサクには和の風格があった。駒場からこれらを抱えて家に帰り、早速ヴィニールのカップからプラスチックの鉢へ、あるいはプラスチックの鉢から陶器の鉢へと植え替えると、すぐに汗だくになってしまう。けれど、その汗も引かないうちにもう少し植物が欲しくなり、再度カルティベイとへ。

こんどはグミとカナメを買い足す。グミを買ったのはこれにも凛とした風采を感じたからなんだけれど、カナメは結論から言うと1株だけ買ったのは間違いだった。カナメは何株も買って生垣にしてようやく格好がつく植物のようで、1本だけひょろりとしているのは少し滑稽だ。けれど、その滑稽さはまさに僕の園芸活動自体の滑稽さであって、そう思うとこの寂しいカナメに親近感が湧く。

新参者ばかり構って古株がスネては困るので、Hくんから結婚祝いでもらったウンベラータの支柱も変えてやることに。このウンベラータはどんどんと伸びて葉を茂らせ、もともと付いていた支柱を追い抜いてしまった。そこで長い支柱を買ってきて、これにヴィニールのワイヤーで緩く固定してやる。

僕の発作的な園芸熱は妻にも感染して、彼女はマーガレットとアイヴィーの鉢を買って食堂に飾る。家の中に緑が増えていくのは眺めていて楽しい。新しい植物が来るとすぐに部屋に馴染み、彼らは、まるで真空に空気が流れ込んだあとのように、何事もなかったように自分の空間を占めるから不思議だ。アリストテレスが「自然は真空を嫌う」を言ったそうだけれど、我が家に来た植物たちは、植物的な真空を憎む義勇兵のように堂々として見える。彼らの心意気が無駄にならないよう、しっかりと育てよう。

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http://www.thesyntaxerror.net/2009/06/21/153757/feed 0
パキラの鉢替え http://www.thesyntaxerror.net/2009/06/21/130944 http://www.thesyntaxerror.net/2009/06/21/130944#comments Sun, 21 Jun 2009 04:09:44 +0000 Syntax http://www.thesyntaxerror.net/?p=879

5月に茨城県小美玉市の花木センターで妻が買ったパキラ、居間に置いていたらワサワサと葉が茂って、鉢も窮屈に見えるようになってきた。そこで、下北沢の日用品店で9号の鉢とそれに合う皿を買って植え替える。玄関先で鉢替えをしてやると、パキラは新しい鉢を早くもノビノビと満喫しているように見えて、世話を焼いた甲斐がある。植物には癒されるなぁ。

植え替える前はこんな感じ。

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ダイニング・テーブル売ります http://www.thesyntaxerror.net/2009/06/14/133503 http://www.thesyntaxerror.net/2009/06/14/133503#comments Sun, 14 Jun 2009 04:35:03 +0000 Syntax http://www.thesyntaxerror.net/2009/06/14/133503


 ダイニング・テーブルを買い換えたので、今まで使っていたものを売りに出します。幅120cm、奥行き75cm、高さ74cm。木製でヴェンゲ色。天板は2.5cmの厚みがあって、造りは堅牢です。難点は天板に直径7cmほどの鍋の黒い焼け焦げがあること。価格応相談。都区内なら車で届けます。




焼け焦げ

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飽和攻撃の予防接種 http://www.thesyntaxerror.net/2009/06/11/222458 http://www.thesyntaxerror.net/2009/06/11/222458#comments Thu, 11 Jun 2009 13:24:58 +0000 Syntax http://www.thesyntaxerror.net/2009/06/11/222458


 マサチューセッツ州法の定めで、渡航前に打っておかなきゃいけない予防接種がいろいろある。いわく、1)麻疹ワクチン、2)おたふく風邪ワクチン、3)風疹ワクチン、4)B型肝炎ワクチン、5)破傷風/ジフテリア追加ワクチン、6)髄膜炎ワクチン。そして、必須ではないけれど「強く推薦する」として7)水痘。医師と相談して、6月8日に破傷風/ジフテリアとB型肝炎の1回目、6月15日に風疹、7月13日にB型肝炎の2回目、7月21日に髄膜炎、7月27日におたふく風邪、というスケジュールを決定。僕は注射が大嫌いなのだけれど、これだけ続くと分かっていると、自分でも驚くほどビビらなくなる。心理的防衛戦として心底ビビれるのは1本か2本が限界で、それ以上の攻撃に晒されるとまるで戦いにならない。軍事用語でいう飽和攻撃ってコレのことか、と思いながら両腕に貼られた絆創膏を撫でる。

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「男の家事」 - 椅子のクッションを修繕する http://www.thesyntaxerror.net/2009/01/18/090146 http://www.thesyntaxerror.net/2009/01/18/090146#comments Sun, 18 Jan 2009 00:01:46 +0000 Syntax http://www.thesyntaxerror.net/2009/01/18/090146

From Blog 2009

もう2か月も前になるけれど、ブログThe Great Escapeで「男の家事」という本が紹介されていて、Kajken氏の軽妙な紹介にひかれて購入。僕もまた、氏の言うとおり「僕たちは自分にできることをただやるのみ」という謙虚な、けれど、それなりの気概でもってこの本を注文した。2か月の熟成期間を経て昨日、ようやくページを開く。ネクタイをして風呂場を洗うこの本の写真は傑作で、妻と笑いながらこの本を読んだのだけれど、僕は内心、かなり感化されていた。そこで先刻、椅子のクッションの修繕に取り組むのだけど、あまりのトホホさ加減に全力失笑してブログでも書くことにする。


 経営者の資質の中に「士気の低い部下をどのように動機づけるか」という項目があるけれど、この本はまさに、家事業界の問題児を更生させるための教則本だった。そして最も素晴らしい点は、それと気づかせないところにある。美しい写真、力強い文言、そして、明確な手順。僕たちは祭礼としての家事を司る神官なのであった。

汚れが目立ちやすい窓ガラスだけに、掃除の効果は一目瞭然だ。部屋全体の明るさ、清潔感にがぜん違いが出る。それだから窓ガラス掃除は、達成感が大きいのだ。ここではワイパーを2本使った、プロの掃除法を紹介する。

 これが「窓を磨く」という見出しの下で述べられる導入部だ。次に、「1 ガラス用洗剤を全体にスプレーする」などとして、ひとつひとつ写真とともに神事の手順が説明される。窓の汚れという原因ではなくて、この作業の先の達成感にフォーカスする。あくまでも結果志向、そして、未来志向。もちろん一流の結果を得るために「プロの掃除法」を体得する必要がある。こういう論法なのだ。
 たぶん女子向けなら、「頑固な汚れもこれで解決。カリスマ主婦が裏ワザを伝授!」というような、原因志向で世俗的なコピーになるんじゃないかと思う。彼女たちにとって、窓ガラス掃除によって清潔感が出るなんて余りにも自明過ぎて、だから噴飯ものなのだ。「窓を磨く」の締めくくりは「7 落とし忘れは確度を変えて目で確認」。これでA4版見開き2ページ。手取り足取り。けれど、この幼稚さを全く感じさせないエディトリアル・デザインの力に脱帽。
 さて、そして椅子のクッション。食堂の椅子の座面がヘタってきてしまったので、これをなんとかする、という一大事業に着手。修理屋に出してもいいのだけれど、椅子を4客運ぶのは面倒だし、無駄な出費も避けたい。そこで、ドイトで低反発クッションを買って、これを椅子の座面とカバーの間に追加することにする。以下、「男の家事」調にプロの対処法を紹介しよう。
椅子のクッションを修繕する
亭主の注意はともすると卓上の料理のみに向いてしまうが、椅子もまた、食客をもてなす重要な素材だ。長年使いこんで座り心地が変わってしまった椅子も、クッションを直すことで生き返らせることができる。目立たない部分だからこそ、細やかな心遣いが伝わるというもの。ここでは低反発素材を使った修繕法を紹介する。
1 値札を取る
クッションについた値札は座り心地に悪影響を与えるので、取り付ける前に取り除く。この時に、ハサミでクッションを傷つけないよう注意する。
2 座面のカバーを外す
四辺のベルクロ(編注「マジックテープ」ではない)を丁寧に外し、座面のカバーを取り外す。取り外したカバーは後で必要となるので保管しておく。

From Blog 2009

3 クッションをあてがう
座面に合わせてクッションを置き、角度を変えて位置を確認する。
4 座面のカバーを取りつける
クッションに力を加えて押しつけながら、先ほど取り外しておいたカバーを取りつける。前後左右に注意をして、ベルクロをしっかりと留めていく

From Blog 2009

5 カバーに入らない
ウレタンのコシが予想外に強い場合、最後の角がカバーに入らないことがある。あまり無理をするとカバーが破れるので、諦めも肝心だ。自分で裁縫できない場合は特に、カバーを破らないようにすること。他人の家事を増やさないことを心がける。
6 全力失笑
せめてブログのネタにし、転んでもタダでは起きないこと。椅子は妻が起きる前に戻し、レシートを探して返品に備える。朝食の際は努力を喧伝せずに平静を装うこと。男の家事、思いつきのあだ花も秘すればこそ。

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オロビアンコ問題 - 民主化した市場 http://www.thesyntaxerror.net/2008/12/20/102926 http://www.thesyntaxerror.net/2008/12/20/102926#comments Sat, 20 Dec 2008 01:29:26 +0000 Syntax http://www.thesyntaxerror.net/2008/12/20/102926


 オロビアンコ(Orobianco)の鞄は、イタリア本国向けの製品と日本市場向けのものとでは仕様が違うことを知った。新宿の伊勢丹で鞄を渉猟していた僕は、期せずしてある2つの鞄のファスナーが違うことに気づいてしまう。それは単なる色や形の違いというだけではなく、一方は滑りが悪くて他方は滑らか、という品質の差だった。僕たちはカモられている!という見方もできるかもしれなけれど、僕が感じたのはむしろ、もはや製品を作るのは「買い手」である、ということだ。


 打ち合わせのあと新宿の中村屋で記号としてのインド・カリーをひとり食べて、どうしようもない雑踏の新宿をハレの街へと変える。20年近くも前に父親に連れられてこの店に来たことを振り返って、その時の僕には付け合わせのピクルスが物珍しかったような、あるいは、それは瞬時に捏造された記憶であるような、そんなことを思う。この懐古調で、僕たちの定番であったような、実はそうでもなかったような、曖昧な紀伊国屋書店にも寄ってみたくなった。けれど、先を急ぐ。
 僕は新しい――といっても4月に買ったまま寝かせていた――靴に合わせるべく、茶系の鞄を物色していた。エロ過ぎず地味すぎずということでステファノマーノ(Stefanomano)、ダニエル&ボブ(Daniel & Bob)あたりを丹念に見るのだけれど、あるオロビアンコに落胆する。オレンジ色の革で縁どりされたナイロンの鞄は伊勢丹の別注品ということで、遊び心があって面白かったのだけれど、ファスナーがいけない。アルミニウムのように軽くて1円玉みたいな音のするつまみを引っ張ると、ぎこちない展開はまるで高校生のデートだった。ところが、別の棚にひっそりと置かれていた別のオロビアンコは全く違っていた。革製のつまみを動かすと、馬力のある自動車のように心地よい重厚さを伴って滑らかに走る。すぐに、この鞄が何故ほかの鞄と違うのかを店員さんに尋ねた。
 店員さんいわく、この茶色一色の鞄はセール用に別途買い付けてきた一点もので、イタリア本国向けの製品だという。ちなみに、これと並んで置かれていたもうひとつの鞄は恐らくドイツ向けということで、型押しの黒い革と定番色よりも若干くすんだ水色のナイロンが大人の色気を出していた。こちらはジャコモ・ヴァレンティーニではなくて、妻のバーバラがデザインしたものらしい。今回のテーマが茶系でなければ、むしろこちらを買っていたかな。みなさん、伊勢丹メンズの地下一階、早い者勝ちですよ。
 さて、店員さんの説明は続く。オロビアンコの鞄、「日本向けのものは別の(というのは、「チャチな」の上品な言い方だ)ファスナーを使っている場合がある」そうだ。さらに持ち手の革を見せながら店員さんが言うには、「日本向けではこういう風に小口磨きまでしていない」とか。これを聞く心境は複雑で、掘り出し物を見つけた喜びが込み上げてくると同時に、日本男児は舐められているんじゃないか?という屈辱の念も湧いてくる。ともあれ、これがセールで3万円台というのは安い。思わず店員さんに「普通なら6万円くらいじゃないですか?」と聞いたら、「そうですね、6万3千円くらいじゃないでしょうか」という返答。「本当はもっと高いんでしょう?」という呑気な客の期待を裏切る店員なんて、そうはいない。そして、こんな愚にもつかない問答で心を決めてしまうから軟弱な日本男児は舐められるのだと悟る。

 ちなみにデザインも日本向けは本国向けと違っていて、特にコントラストの強いものが多いらしい。確かに、オロビアンコというとそういう派手な印象がある。そういえば、以前ミラノで買ったフェリージ(Felisi)の真っ黒の鞄も日本のお店ではまだ見たことがない(街で持っている人は何度か見たけれど)から。イタリアのナイロン鞄に日本市場は派手さを求めているのかも知れない。店員さんいわく、「これが日本向けならステッチの色を変えて目立たせるんじゃないでしょうか」とのこと。

 こんな風に海外製品のマーケティングについて学んだところで、ある友人の「ビオテルム問題」というブログを読む。いわく、愛用しているビオテルムが日本から撤退するので「ショックで声も出ない」らしい。メトロセクシャルからは程遠い男子としては、海外から通販か何かで買えばいいじゃないか、と能天気なことを思うのだけれどそれは大間違いらしい。なんでも、化粧品も「日本処方」やら「アジア処方」やら「ワールドワイド共通処方」やらという違いがあるらしい。だから、ものによって香港からの並行輸入でOKということもあれば、日本撤退で永久に入手不可ということもあるんだとか。スキンケア猛者の彼女は買い溜めに加えて果敢にもロレアルにまで問い合わせをしているけれど、同じブランドの同じラインナップだからといって、中身まで同じとは限らない、ということだ。
 肌質の違いにせよ色彩感覚の違いにせよ、企業は消費者の需要に応じて製品を作る。消費者は単に提供された製品群から選択をしているだけではなくて、その選択を通じてさらに将来の製品仕様に影響を与えている。企業のマーケティングが活発して市場が双方向化すればするほど、実質的な意味で商品を作るは「買い手」になる。YKKを生んだ日本市場に、あろうことか敢えて低質なファスナーをつけた鞄が輸出されたとしたら、それは他ならぬ僕たち自身が招いた結果なのだ。その一つの証左として、思い出して欲しい。冒頭に挙げたオレンジ色の鞄は伊勢丹の別注品だったことを。ファスナーの違いも小口磨きの違いも認識したうえで、なおも百貨店がその仕様を発注しているだから、その鮮やかな色彩は日本が求めた色彩であって、その低質なファスナーもまた日本が受忍した品質ということだ。オロビアンコの鞄のイタリア、ランコムのファンデーションのフランス、グローバルなマーケティングが格段に薄めている。
 僕たちはいま、民主化した市場を生きている。そこには国境もなく、作り手もない。

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車内の取説 < 家の夫 < Google http://www.thesyntaxerror.net/2008/09/15/194623 http://www.thesyntaxerror.net/2008/09/15/194623#comments Mon, 15 Sep 2008 10:46:23 +0000 Syntax http://www.thesyntaxerror.net/2008/09/15/194623

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 僕の車を、妻が初めて独りで運転して出かけていった。そんなわけで僕は、運転手と車体が無事に帰ってくるか家でやきもきしていた。しばらく経って妻から、「なんかへんなのでた!」という、緊急のようでいて全く要領を得ないメールが届く。シカかクマが環七に飛び出したかのように読めるけれど、きっと警告灯が表示されたのだろう。電話で確かめると案の定そうで、それは「壷の中にビックリマーク」という、これまた要領を得ない説明。そして送られてきた写メールが上の画像。これは僕も見たことがない。さて、困った。


 僕は電話でトランクに取扱説明書があることを話したけれど、運転手は「じゃあスタンドに行ってみる」という返答で、マニュアルを紐解く気は毛頭ないらしい。そこで僕は自動車メーカーのサイトでマニュアルを探してみたけれど、載せていないようだった。PCの前で自動車の取説を読むという状況は稀なんだろう。そこで試しにGoogleで「警告灯 BMW」と画像検索してみると、出てくる出てくる。写メールに写った警告灯を見つけるのにそう時間はかからなかった。
 あるブログによるとこれはパンクの警告らしい。機械音痴にも馴染みあるローテクな事象でなにより。ガス・スタンドで見てもらうように妻に電話する。パンクそのものよりもショックだったのは、ブログ主が「この警告灯はマニュアルをみなくても一目瞭然!パンクです。」と書いてあったこと。妻は電話口で「壷」と言っていたし、そう言われると僕もタンクの系統かと思ってしまう。けれど、現代の自動車のトラブルが、いくら象徴的にせよ陶器の壷で表象されるわけはないのだ。僕も焦っていたのだ。二人して図表リテラシーが低い、ってわけじゃないとしたら(十分ありえる)。
 ともあれ、改めて実感するのはGoogleの力。僕が彼女の助けになったのはGoogleが使える環境にいたという点と、トランクのマニュアルよりも気軽な存在だという点に尽きる。極論すれば、運転席から「ググれ」たら取扱説明書も家人も要らなかったかも知れないのだ。レクサスが、運転席から携帯電話でオペレータに話すと近くのホテルやらレストランやらを紹介してくれるサーヴィスを提供していて僕はちょっと惹かれたけれど、それすらも音声か何かでググれたらそっちの方がずっと早いし気楽だ。相手がググれないのに付け込んで報の関所して「頼れる夫」感や高級感を演出する商売はそう長くは続かない気配だ。

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世田谷、ウェストミンスターを破る http://www.thesyntaxerror.net/2008/07/06/230557 http://www.thesyntaxerror.net/2008/07/06/230557#comments Mon, 07 Jul 2008 04:05:57 +0000 Syntax http://www.thesyntaxerror.net/2008/07/06/230557

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 この写真は僕が2007年の8月に近所で撮ったもので、道路標識か何かの柱に巻かれていた世田谷区の区章だ。結論から言ってしまうと、この区章は素敵だ。フィッシュマンズのアルバムに「宇宙 日本 世田谷」というのがあるらしい。僕はそのアルバムを聴いたことがないけれど、世田谷(区章)の強さを宣言している点において大賛成だし、それがために聴いてみてもいいと思う。さて、その世田谷(区章)がついに英国ウェストミンスター(市章?)を打ち破った。もちろん、道路標識か何かの柱の話だ。


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 これは5月にロンドンで撮った写真で、電柱に浮き彫りにされた模様だ。見えるので、そうだとしたら、これはウェストミンスター市を示すのではないかというのが僕の推論だ。ただのニョロニョロかも知れない。ただし、いずれにせよ、支柱の装飾としては世田谷の方が上出来だ。
 もちろん、ウェストミンスター(だということにしよう)の、鋳造や色彩の重厚さは圧倒的だ。ニョロニョロしただということにしよう)さえ、「イニシャルでわかるだろう」と言わんばかりの威圧がある。けれど、そこにはどこか自己満足的な、ともすると独り相撲的な、そういう権威を感じてしまう。
 対して、世田谷のトゲトゲには、そういった現世的な自己顕示がない。区の説明では「外輪の円は区内の平和、中心は「世」の文字が三方に広がり、人びとの協力と区の発展を意味しています。 」とのことだけれど、「世」の文字は極限まで抽象化され、垂直に交わる直線の印象を辛うじて留めるまでに至っている。その形而下の印象の向こうには、「平和」や「協力」・「発展」といった普遍的な想念が織り込まれている。
 もちろん、デザインの後講釈などただの飛型点だ。本当の飛距離は、実は素材という時代性にある。世田谷のトゲトゲは反射性の「キラ」でできていて、それはポスト・ビックリマン世代の現代においては権威の象徴にほかならない。ケータイがスワロフスキーのクリスタルを従える現代の文脈で、あるいはその出現以前に、区章が「キラ」で飾られている。対するウェストミンスターのレリーフは華麗ながらも古代エジプト文明の借用でしかない。英国博物館の歴史的所蔵物が、結局のところ借り物ばかりであるのにも似ている。
 もちろん、世田谷が英国のいち行政単位を凌駕したところで、区民にとっては小さな一歩かも知れない。けれども、明日またロンドンに行く僕にとっては重要な確認事項だ。エリンギのソテーと、ピーマンとベーコンの炒め物を適当につくり日本酒で晩酌をして上機嫌の世田谷の僕が、ベートーヴェンの交響曲に勢いを借りて言うのだから、これはほぼ間違いない(という可能性がある)。ロンドンでは強気で行く。キラのシールの現代日本から、レリーフの鋳物の英国と対等の事業を提案しよう。なにしろ、2008年ですから。

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成城でノート・パッドの夢をみる http://www.thesyntaxerror.net/2008/07/06/201817 http://www.thesyntaxerror.net/2008/07/06/201817#comments Sun, 06 Jul 2008 11:18:17 +0000 Syntax http://www.thesyntaxerror.net/2008/07/06/201817

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 妻の友人Yさんと食事をしに成城学園前まで行ったら、Yさんが駅界隈を案内してくれた。その中でも一番の収穫はこの、ロベール・ル・エロ・パリ(Robert le Heros Paris)のノート。ロディア(Rhodia)の橙のカバーも色こそ楽しげで好きだったのだけれど、デザインはストイックだ。中身が方眼紙なんだから、外見くらい遊ぶべきじゃないか。いや、別にそういう風に思っていたわけじゃないんだけれど、一目見ただけでロベール・ル・エロにそう思わされてしまったのだ。


  ロベール・ル・エロのブロッサムというこのノート、表紙には紺や桃、橙や黄土の花々が咲き誇っていて賑やかだ。それでいて空が開いているからうるさくない。ブロッサムという名前を尊重して花々といったけれど、この柄の率直な印象は精子か胞子だ。まぁ、それらもまた、ブロッサムということで深入りはしない。方眼の線は柔らかい橙色で温かい。
 ロディアに比べると、紙質がちょっとゴワゴワするような気がするのと、方眼の線は青のほうが目立ちすぎずにいいんじゃないかという気がする。けれども、紙質もペンの滑りに障るわけではないし、方眼に至ってはそもそも無視して使っているので、どちらもどうってことない。大事なのはやっぱり、これを開いて「さて勉強しよう!」って気分になるかどうかなのだ。ロディアもいいけれど、ロベール・ル・エロのほうが盛り上げ上手だ。そう思う限り僕は、このノートでより盛り上がるのだから、予言の自己成就にほかならないけれど。
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 駅ビルではほかにライブを観たりもした。遠くから聴こえてきて、Yさんが「オペラの音楽では?」と言い、僕は「日本語の歌詞が聞こえるけれど?」と言ったけれど、そのどちらもが正解だった。曲はボロディンの「ダッタン人の踊り」で、日本語の歌詞があてられていた。歌っているのは藤澤ノリマサという歌手で、迫力満点の歌唱力。でも、「ダッタン人の踊り」は曲の雄大さや情景に歌詞が全く負けている、という印象。オペラだけでは商業的な魅力が乏しいのか、と勝手に邪推。
 成城では桂花という中華料理屋で舌鼓を打ち、女子の間では有名らしいサロン・ド・テ・アンジェリーナでお茶を飲む。あとは小さな雑貨屋で爽やかな色合いの布巾を買う。成城ってかなり女子度が高い街なんじゃないかと、花柄のノートやらチェックの布巾やらを買って気づく。僕は流されやすい男子なのです。

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ピロー・トーク http://www.thesyntaxerror.net/2008/06/29/204825 http://www.thesyntaxerror.net/2008/06/29/204825#comments Sun, 29 Jun 2008 11:48:25 +0000 Syntax http://www.thesyntaxerror.net/2008/06/29/204825

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 一緒に寝るようになってから、もう4年くらい経つのだろう。けれど、僕はその枕が苦手だった。ちょっと高すぎるようで、朝起きると首が痛い。だから、ここ2年くらいは脇によけて寝ている。けれど、なかなか変えられない。買い換えた枕が合わなかったら、どうしよう。敢えて比べるならば、僕は恋愛よりも枕に関して臆病なのだ。


 そんな状態だから、出張先でいい枕に出会うと持って帰りたくなる。枕が変わると眠れないといって枕を持参する人の話は聞いたことがあるけれど、旅先から枕を持ち帰るという発想は斬新だ。そして僕はこの衝動に駆られるたびに、枕に恵まれない可哀想な自分を旅先で憐れむ。チェック・アウトしたら、またあの枕に戻らなきゃいけないなんて。これが悪化したら帰宅拒否症候群になるんじゃないだろうか。いや、これが既に帰宅拒否症候群なんじゃないだろうか。
 シェラトン・マンハッタンでチェック・アウトの朝に「この枕を黙って持ち帰れないか」と思案すること3回目にして、ついに、僕は枕を買い換えることを決意する。ほとんど持って帰りそうになったのだけれど、やはり、この枕で何百人もが寝ていると思うと気がひけた。それに加えて、ホテルの備品を持ち帰るべきではない、ということもある。帰りの飛行機は空いていたので、手近な席の枕をふたつ重ねてみたり、みっつ重ねてみたりして理想の高さを探す。なんて前向きな作業!
 調べてみるといろいろ分かってきて、青山の丸八真綿では枕の貸出をしてくれるらしい。使用してから新品を買う、というのは画期的だ。考えなしに無印良品で枕を買って失敗したり、悩んだ末にホテルから枕を失敬したりすることのデメリットを解決している。ただ、借りた枕を返す時に売価の10%が手数料として取られる、というのがいただけない。試用というのは無料であるべきなんじゃないかな。
 さて、悩んだらシモンズ。日比谷のショールームでいくつか試して、結局、デラックス・フェザー・ピローの低い方に落ち着く。普通のフェザー・ピローでも十分良かったのだけれど、普通の方は「少しごわつく」と店員に言われると、確かに「少しごわつく」感じがする気がする。そうなると、デラックスに進まざるを得ない。これはちょっとズルい。ポケット・コイル・ピローも軽やかで良かったけれど、コイルという語感が機械的で「少しごわつく」ので、実際には柔らかな寝心地だったのだけれど遠慮する。コイルに支えられるよりも、羽根に抱かれて眠りたい。いい睡眠には小さじ一杯の詩情も必要なのだ。
 さて、そんなこんなで新しい枕が土曜日に配達され、僕はついに100%の枕とベッド・インする。それはそれは素敵な夜だったのだけれど、おかげで今朝は寝坊。駅へ急ぎながら、それでも、そんな寝坊がちょっと嬉しかったりするのろけっぷり。

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http://www.thesyntaxerror.net/2008/06/29/204825/feed 0
アメックス・プラチナ研究 - 総括 http://www.thesyntaxerror.net/2008/05/03/225653 http://www.thesyntaxerror.net/2008/05/03/225653#comments Sat, 03 May 2008 13:56:53 +0000 Syntax http://www.thesyntaxerror.net/2008/05/03/225653

 アメックスのプラチナ・カードには、上客と思えばさらに毟り取る、という痛快なほど獰猛な価格戦略を感じる。まえに計算したとおり、僕は年会費に加えて年間数十万円の手数料収入をアメックスにもたらしていると思う。だから年会費を免除しましょう、というのは分かる。ところが、その矢先にご丁寧にも年会費10万円のカードに「ご招待」された。そこで、こちらも内容を細かく検討して迎撃した。その結果サインしたのは、決して術中にはまったわけではなく、そこに費用対効果を見出したからだ、と思いたい(デクレッシェンド)。


 ゴールド・カードの年会費は27,300円でプラチナ・カードの年会費は105,000円だから、その差額77,700円について検証する。
 定量面ではラウンジ・アクセスの4万円と諸補償の1.1万円、合計5.1万円を認めていいと思う。残りの2.7万円は、定性面で越えるか否かだから、いよいよ主観的個別的になる。実用性ではファイン・ダイニングとライフスタイル・サービスが双璧で、ドラマとしてはプラチナ・アクセスとヘリコプター、クルーザー、戸塚カントリー倶楽部が光彩を放つ。
 定性面は使わないことには検証できないけれど、言いかえれば不確定のリスクも2.7万円に限定されているから、いわばひと月2千円ちょっとであって、とかなんとか。また、同じ年会費で家族カードが4枚作れるのだから、1枚当たりの年会費は2.1万円だから、とかなんとか。要は、なんだか面白そうだからちょっと試してみたいだけなのだ。やれやれ。
 なんとなく予感した結論なのだけど、申込書にサインして投函。届いたら年会費分は使い倒してやろう。いつか家族カードを作ったら一族郎党で使い倒してやろう。ん? 待てよ。そうしてさらにカモになっていくのか。そうか、そういうことか。ある意味で大人の階段を一歩すすんでしまった気分だ。まぁここまで調べたんだからいいんじゃないか、という気分は「投資委員会の第二法則」か。

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http://www.thesyntaxerror.net/2008/05/03/225653/feed 0
アメックス・プラチナ研究 - 補償 http://www.thesyntaxerror.net/2008/05/03/204948 http://www.thesyntaxerror.net/2008/05/03/204948#comments Sat, 03 May 2008 11:49:48 +0000 Syntax http://www.thesyntaxerror.net/2008/05/03/204948

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 クレジット・カードの機能を云々するというのは、恐ろしく所帯じみた行為だ。そして、所帯じみた一切をともすると下賤なものと感じてしまう僕は、我ながらそろそろ辟易してきてきた。けれど、補償という実に所帯じみた機能には、しかし、生活者の実感として感じる魅力を否定できない。興奮はないけれど実利に叶うこれらについては、類似の保険料を参考にして再調達価額を評価しよう。


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メディカル・コンサルテーション
健康に関する無料電話相談や、医療機関の無料電話案内サービスをご提供いたします。さらに、各種検診サービスも優待価格にてご利用いただけます。

 定期的に人間ドックを受けさせられていて、かかりつけの病院と歯科をオフィス・ビルのなかに野戦病院のごとく持つ身としては、ことさらに魅力を感じない。けれど、例えば身内に何らかの必要が生じたら頼りになるかも、くらい。

ワランティー・プラス
カードで購入された商品であれば、メーカーの保証期間が過ぎていても、故障・修理・部品交換などを、さらに2年間延長して保証いたします。

 諸条件が違うから単純に比較できないけれど、ビックカメラの「ビック長期保証」は商品代金の5%という。平均すれば少なくとも年間10万円くらいは「家電製品・パソコン・時計・カメラ・電話機」の類を買っているだろうから、5,000円分の価値と見なそう。

個人賠償責任保険
プラチナ・カード会員さまご本人やご家族に、日常生活でおこるほとんどすべての事故について賠償責任が生じた場合、1事故につき最高1億円まで補償いたします。

 オール・アバウトの「なかなか使えるぞ!個人賠償責任保険」という記事では、「おおよその目安としての保険料ですが、保険金額1億円で単独で加入する場合は2,000~3,000円/年間程度」と書いてあるから、2,000円分の価値と見積もろう。

ホームウェア・プロテクション
カード会員さまが現在お持ちの家電製品・パソコンやカメラ等が万一破損した場合、カードの購入の有無にかかわらず、ご購入金額の50~100%を保証いたします。

 家財保険や生活用動産保険といった単語で検索してみたけれど、適当な保険商品が出てこない。補償範囲はやっぱり「ビック総合保障」に似ているから、上述のワランティー・プラスとこのホームウェア・プロテクションを合わせて5,000円の価値と見なそう。

旅先での安心
ご旅行を心ゆくまでお楽しみいただくために、プラチナ・カードならではの確かな安心をご用意しております。
・国内・海外旅行傷害保険:
会員さまはもちろん、配偶者や生計を共にするご親族の方についても、引き続き補償が適用されます。
・プラチナ・カード・アシスト:
パスポートの紛失や病気・ケガなど、海外旅行中に万一のことが起きた時にも安心して旅行をお楽しみいただくために、さまざまなサポート・サービスをご用意しております。

 出張の多い僕にとって海外旅行中の補償は気になる。だから慎重に比較したいけれど、全く同じ条件の保険を探すのは困難だ。また、ゴールド・カードもそれなりに充実した旅行保険を備えているし、アメックスのみならずとも多くのカードは保険を備えているから、この部分ではゴールド・カードを基準としてその差分の価値を考えてみることにする。

上の表がゴールド・カードで、下の表がプラチナ・カードだ。旅行代金はいずれもカード決済しないと仮定してゴールド・カードと比較すると、障害治療費用保険金が800万円増枠、疾病治療費用保険金も800万円増枠、賠償責任保険金は1,000万円増枠、携行品損害保険金については1旅行あたりで50万円増枠、そして、救援者費用保険金が700万円増枠、という具合だ。
 死亡保険金が同一でほかが違う保険商品を探すのには苦労したけれど、ニッセイ同和の「3A」と、AIUの「153」は、治療・救援費用が1,500万円異なっていて、保険料は同じ5泊6日で約1,000円違う。そこで、同費用が700-800万円増枠されているプラチナ・カードの価値増分は旅行1回あたり500円としよう。僕は去年暦年1年間で公私あわせて8回は海外に行ったから、それを基準とすれば年間4,000円の価値となる。(確認のためパスポートを探したら見当たらない。火曜からロンドンに行けるのか?という大問題が発覚。こんなマニアックな計算をしてる場合じゃない。)

キャンセル・プロテクション
費用をお支払い済みのご旅行やコンサートなどに、入院などにより行かれなくなった場合、カード会員ご本人さまが負担されたキャンセル費用を年間50万円まで保証いたします。

 楽しみにしていたイベントに急遽行かれなくなって、さらにはキャンセル費用を払わねばならなくなったらダブル・パンチだ。まして入院ということならトリプル・パンチ。そういうきっ面に蜂態を回避してくれるというのは、心理的に救われる。とはいえ、類似のサーヴィスが見当たらなかったので、評価できず。
 ともあれ、以上の補償を全部合計すると、11,000円分くらいの価値があるんじゃないな、という見積もりになる。わりと妥当な推測じゃないかと自画自賛してみる。ともあれ、それだけの価値を僕が見出すのならそれでいいのだ。人間は自分の試算に愛着を抱く、という微笑ましくも厄介なこの現象、マーフィーの法則風に「投資委員会の法則」とでも名付けよう。

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http://www.thesyntaxerror.net/2008/05/03/204948/feed 0
アメックス・プラチナ研究 - 娯楽その2 http://www.thesyntaxerror.net/2008/05/03/174016 http://www.thesyntaxerror.net/2008/05/03/174016#comments Sat, 03 May 2008 08:40:16 +0000 Syntax http://www.thesyntaxerror.net/2008/05/03/174016

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 この研究で面白いのは、いままで考えもしなかった企画をアメックスが示唆するところだ。予言の自己成就として、利用してみたくなる機能がでてくるのが面白い。お茶屋もそうだけど、ヘリコプターからの観覧とかクルーザーの操縦とか、そういったものだ。もちろん、100も切れないくせに戸塚カントリー倶楽部をラウンドしようとか、分不相応な考えは自制しよう。けれど、将来の楽しみとして温めるくらいは許されるだろう。そういう夢想の種を得るのは楽しい。

スポーツクラブ・アクセス
会員制をはじめ限られた方のためのハイクラスなスポーツクラブを入会金および年会費無料・都度利用料金でご利用いただけます。また、ご同伴の方も1名さままでご利用いただけます。

 どこで自転車を漕いでも消費するカロリーは同じだから、興味ないなぁ。僕が求めているのは、10回腹筋するだけでシックス・パックになる腹筋台とか、3往復するだけで逆三角形体型になるプールとか、とびきりの設備を整えた極めてハイクラスなクラブだ。その他の庶民的なジムには興味がないので、ジムには行かず、もはや途中でやめられなくなってしまったカード談義の続きを部屋で書くことにする。

プレミア・ゴルフ・アクセス
戸塚カントリー倶楽部、千葉カントリー倶楽部など、会員制の一流ゴルフ場を、メンバーの紹介や同伴なしでビジター料金のみでご利用いただけます。

 戸塚カントリーは上司がメンバーだった気もするれれど、勝手に予約してのびのびとプレイできたとしたら魅力かも知れない。けれど、僕の打球は常にのびのびとして予想もつかない方向に飛んでいくので、とにかく100を切れるようになってから考えよう。うーん、いつになることやら。

ラグジュアリー・フライト
豪華なヘリコプターをご希望日にご利用いただけます。上空からの眺めをお楽しみください。

プライベート・クルーズ
オーナーのように、クルーザーをご希望日にご利用いただけます。ご自身で操縦いただくこともできます。

 これらは面白いところで、そう言われてみれば、クルーザーを自分で操縦してみたいなぁ、とあまりにも愚直な感想を抱いたりする。ヘリコプターで夜景を見る、というのもエロすぎて鼻血が出そうだけれど、一生に一度くらいはそういう遊びをしてみてもいいかも知れない。ちょっと興味あるけど、なんか恥ずかしい、キャー、みたいな。僕はその初心な羞恥心のせいでなかなかサーフィンを試せなかったから、その反省を踏まえてクルーザーやヘリを評価したい。
 これら個々の要素には全く実用性を感じないものの、興奮は実用とは違うところからやってくる。そういう興奮を用意する語彙がアメックスにはこれだけありますよ、という主張としては十分に説得力がある。プラチナ・カードが、高校の落第生みたいに新しい遊びを持ちこんでくるのなら、敢えてその紫煙を吸い込んでみようという気分にもなる。この馬鹿げた高揚感を思うと、実用的なクレジット・カードは却って退屈に見えてしまう。

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http://www.thesyntaxerror.net/2008/05/03/174016/feed 0
アメックス・プラチナ研究 - 娯楽その1 http://www.thesyntaxerror.net/2008/05/03/163701 http://www.thesyntaxerror.net/2008/05/03/163701#comments Sat, 03 May 2008 07:37:01 +0000 Syntax http://www.thesyntaxerror.net/2008/05/03/163701

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 クレジット・カードが提供する旅行の機能は旅行代理店との比較になるとしたら、娯楽の機能はなにとの比較になるだろうか? 強いて挙げれば、それは秘書だろう。仕事でも日本を離れたら東京のアシスタントは帰宅していたりするし、私用なら東京にいても誰彼構わず細かな注文を頼めるわけでない。そんなときに、レストランやチケットを代わりに手配してもらえるなら、これは文句なしにありがたい。

ファイン・ダイニング
北米・カナダ地区で600店以上、ヨーロッパで250店以上に加え、国内のよりすぐりのレストランのご紹介と手配をいたします。会員さま専用のテーブルを毎日1席ずつご用意するなどの特典がございます。

 たとえば、仕事で面談をしているうちに夕食に流れ込むことが時としてある。そういう時は東京なら勤務先のアシスタント(言うまでもなく個人専属じゃない)に電話して適当にお店を予約してもらったりするのだけど、海外ではそうもいかない。面談を続けることと、店を調べて予約を入れることを両立させるのは難しい。だから知っている店何軒かの連絡先をポケットに忍び込ませることになるのだけれど、これでは新しい店には出会えない。といって、冒険をすれば痛い目に遭うかも知れない。
 そんなとき、電話1本で店を適当にみつくろってもらえるなら助かる。この「適当にみつくろう」というのが実は高度な作業で、東京のアシスタント諸姉には流石だと思わせられることが多い。けれど海外では時差と情報の壁に阻まれて頼めない。人を誘う店を見知らぬ土地で探す心細さと言ったらない。ロサンゼルスを運転しながら店々に電話をかけまくった(もちろんハンズフリーだけれど)のを思い出すだけで、このファイン・ダイニングの機能は買いだと思う。

料亭のご案内
東京、大阪、京都の3都市にて、高級料亭をご案内いたします。大切なご友人、お知り合いとの会食などにぜひご活用ください。

 高級料亭には行ったこともないし、目下のところ行く気配もないのでよく分からない。ただ、そういう機会がやってきたらこのカードを思い出せば済むわけで、それだけで保険にはなるだろうと思う。とびきりの悪だくみをするときは、とびきりの料亭でやってみたい。えへへ。なんて、陳腐な妄想を膨らませてみる。

ライフスタイル・サービス
<イベントのご案内>
注目のスポーツ・イベントや観劇など、厳選したイベントをご案内いたします。

<ギフト・サービス>
誕生日プレゼントや記念日の贈り物など、ご要望に合わせたギフトのご相談、手配を承ります。

<パーソナル・インポート・サービス>
日本での未発売の商品や、外国語での注文を必要とする商品の購入や発注の代行を承ります。

<チケットの手配>
コンサートや演劇、イベントなど、国内外のチケットを手配いたします。

<インフォメーション・サービス>
ハイヤー・タクシー会社、会議室や通訳のご案内など、便利な情報をご提供いたします。

 だんだん面白くなってきた。旅行とホテルとレストランとチケットがいっぺんに頼めるなら、これはうちの両親あたりに最適かも知れない。僕はむしろ楽しんでいる節があるけれど、フライトの到着時刻にあわせてイベントを探したりするのはそれなりに難しい(イベントに合わせてフライトを探すわけじゃないのが出張の悲しいところだ)。僕は、ある年齢を超えるとこの手のアレンジの壁が寝たきりを誘発したりするんじゃないかと真剣に危惧している。転ばぬ先の杖として家族カードを作ってもいいかな、と思う。
 それはそれで楽しかったけれど、こないだのパリで僕は、「イドロメル(Hydromel)」というブルターニュ地方特産の地味な酒を探すのにひどく苦労した。たとえば、いま家の食堂に飾っているイドロメルの瓶を空けた友人がそれを気に入った時に、個人輸入を代行してくれたら彼にプレゼントしてあげることもできるだろう。ギフトと言えば、僕は何かのお礼をしようにも億劫がって結局そのまま礼を欠いていることが多い。日の目を見ない僕の怠惰な善意が、しかし、カード会社の踏切板を借りて誰かに届くなら、その価値は大きい。
 これらの機能は、少なくとも僕には代わりが思い浮かばないもので、かつ、料亭を除けば依頼したい場面がいくつも浮かぶ。ここにきて、プラチナ・カードっていいかも知れないな、と陥落しそうになる。

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アメックス・プラチナ研究 - 旅行その2 http://www.thesyntaxerror.net/2008/05/03/140528 http://www.thesyntaxerror.net/2008/05/03/140528#comments Sat, 03 May 2008 05:05:28 +0000 Syntax http://www.thesyntaxerror.net/2008/05/03/140528

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 「通常は非公開の文化財の特別拝観などを可能な限り手配いたします」、キタコレ! コーヒー1杯を奢ってくれるとか、唖然とするほどどうでもいい特典に並んで、ようやく期待を高めてくれる内容を見つける。プライオリティ・パスは4万円相当だとか、そういう再調達価額を積み上げても面白みがない。こういう、――「他にはない」とまでは言わないけれど――ほかでは実現のすべが分からない機能にこそ胸が高鳴る。

ホテル特別ご優待プログラム
<ファイン・ホテル・アンド・リゾート>
世界500ヵ所あまりの一流ホテルやリゾートでのご宿泊に、「お部屋のアップグレード」、「朝食サービス」など会員さま限定の特典をご用意しております。

<国内高級ホテル・旅館のご優待>
老舗旅館や高級ホテルで、優先予約やご優待特典をご利用いただけます。

 対象のホテルは定かではないけれど、「Fine Hotels and Resorts」(FHR)を検索して出てきた英語版のサイトを見る限り、各チェーンの最上位ブランドが主な対象みたいだ。スターウッドならセント・レジス、マリオットならリッツ・カールトン、ヒルトンならコンラッド、ハイアットならパーク・ハイアット、という具合だ。僕はチェック・インするなりすぐに街に飛び出して寝に帰るだけだから、これらの施設は過分だ。
 さらに、部屋のアップグレードも多少気分はいいけれど、えてして実利がない。いつか唐突にスイートを用意されて、その一室の使い道がまったく思いつかなかったのを思い出す。旅行鞄を置いてみたものの手許にないと不便なのでベッド脇に引き戻し、続き部屋には結局、靴下を脱ぎ捨ててただけだ。一国一城の主を気取る臭い靴下を眺める、あの遣る瀬無さをふと思い出した。みんなスイートでなにしてるの? シャワー・ルームのビデくらい使い方が分からない。
 ただし、パリのル・メリディアンで通された「ル・クラブ・プレジダン」のフロアみたいに専用の食堂とキャッシャーがあるなら実利がある。チェック・アウトの行列を避けて、朝の貴重な時間で朝食とチェック・アウトをストレスなく済ませられるのはありがたい。その背景には、概して欧米のホテルの会計はいい加減だから一行一行確認する必要があって、エキスプレス・チェック・アウトの類は遠慮したい、という事情がある。仕事が粗末だからアップグレードに意味が出る、というのも妙な話だけれど。ともかく、このFHRはそれなりに意味があるかもしれない。

プラチナ・アクセス
「一見さんお断り」の料亭、お茶屋などのご予約のほか、通常は非公開の文化財の特別拝観などを可能な限り手配いたします。

 これは一気に期待を掻き立てるものがある。すっかり忘れていたけれど、ジャパンといったらニンジャとゲイシャだ。日光江戸村の行き方は分かっても、お茶屋での遊び方はよく分からない。店も知らなければ予算も分からないし、作法も分からない。とは言え、なかなか直接尋ねづらい。だから、そういう情報をコンシエルジュ経由で入手できるならお茶屋も近づく。
 公開中の文化財すら見きれないのに、わざわざ非公開の文化財なんて見ようと思うのだろうか。けれど、もし何かの拍子に、なんとか寺のなんとか像が無性に見たくなったとして、僕はどうすればいいのだろう? 文化庁に電話するとか? うーん、なんか期待できない。そういう時に、電話一本でアメックスが可能性を調べてくれるなら、心強い。
 一方で、本来これは文化庁の仕事なんじゃないかとも思う。「文化財おしえてダイヤル」みたいなのがあるべきだ――既にあるのかも知れないけれど、認知させる努力が感じられない。ともかく、悪いけれど文化庁には既に「なんか期待できない」空気があるから、こういうサーヴィスが跋扈するのだ。そして、それに僕は激しく惹かれてしまうのだ。

コンフォート・カフェ
プラチナ・コンシェルジェ・デスクを通じてJR新幹線の特急券および乗車券をご購入いただきますと、新幹線主要ターミナル駅近くの提携ホテル内カフェ・ラウンジにて、1ドリンクをサービスいたします。

 せっかくプラチナ・アクセスで盛り上がってきた気分を、一気に醒ます驚異のコンフォート・カェ。僕だったら、コーヒー1杯をただで飲むために駅からホテルまでわざわざ出向くより、駅構内のコーヒー・ショップで休む。リッツ・カールトンの宿泊客や「一見さん」お断りの料亭の訪問客を対象としながら、唐突にコーヒー1杯の無料券を声高に誇る感覚が理解できない。僕にはアメリカン・ジョークのセンスが乏しいのだろう。炎天下の八重洲をフォー・シーズンズまで歩いてコーヒーにありつくことを野暮にも想像してみる。
 けれど、そういううでもいい特典いうのが時に嬉しかったりするのは、僕も羽田のアメックス定食について白状している通りだ。アメックス定食の良かったところは、それが空港内で供されるところにあって、旅行者の導線への洞察を感じた。国内線では通常は機内食が出ないという事情にもよく合致していた。うでもいい特典旅行者の歓心を買うなら(意外に買えるものだ)、噴飯のコンフォート・カフェよりも、タダ飯のアメックス定食復活じゃないか。

手荷物無料宅配サービス(旅館・ホテル)
プラチナ・コンシェルジェ・デスクでご予約いただいた国内提携ホテル・旅館にご宿泊の際に、1組さまにつき1宿泊予約で1個まで、無料でお荷物を国内のご指定先へ配送いたします。

 ふーん。
 と、濃淡はあれどアメックス・プラチナ・カードの旅行に関する機能について、逐次検討してみた。力量は分からないけれどプラチナ・アクセスには夢を膨らませるものがあって、ダメならダメで気にしないからいろいろ相談してみたい、という気分にさせられた。その気分に比べたら興奮はないけれど、少なくとも4万円相当と評価できるラウンジ・アクセスも利点ではある。気持ちがちょっと傾く。

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